増えすぎたブランドの整理も、利益率向上に寄与している。この徹底ぶりが「他社との収益性の差につながっており、他の大手もまねしようとしているが、できていない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の川本久恵アナリスト)という。
ドラッグストアで展開するブランドについては、「美白」か「アンチエイジング」か、メーキャップかスキンケアか、それぞれの特徴と攻める市場を明確にした。
その結果、商品数とブランド数ともに2割程度絞り込んだ。8月にはコスメデコルテの最高級シリーズ「AQ」で展開する3つのラインを一本化すると発表。ブランドの整理は今も続いている。
新製品の乱発にもメスを入れた。新製品を厳選する一方、既存品の拡販に注力し「ロングセラー化」を図った。その結果、各月の売り上げに占める新製品の売り上げの割合は、07年当初に比べ、現在3分の2程度に抑えられている。
同族経営だからこそできる思い切った「捨てる経営」と、脈々と続く「感性の経営」。このバランスをうまく取ったことが成長の起爆剤となった。
海外開拓、資生堂に遅れ
今後の課題は海外だ。海外売上高比率は2割程度で、資生堂の5割強に比べて低い。特に成長著しいアジアでの販売強化は必須だ。北米については小林社長の実弟である正典常務がニューヨークに、アジアについては仁尾智行執行役員が中国・上海に、今年3月からそれぞれ拠点を移し、陣頭指揮を執る。
創業者の孝三郎氏時代からの取引先である化粧品専門店・粧苑すきやの由佐幸継代表は「創業者のDNAが脈々と流れているのがコーセーの強み。現社長の代で第二の創業期に入った」と評価する。スタイルは強烈なトップダウンにほかならないが、現状は組織の硬直化などの弊害は表れず経営は好循環していると言える。
小林社長の子供たちはまだ学生。「子供たちには、ファミリーだからといって簡単に(経営を)やれると思ったら大間違いだよと言っている。同族経営というのが悪い方向にいかないようにしたい」と話す。
4代目で同族経営の強みに磨きがかかったコーセー。最大のライバルである資生堂は創業家の福原義春氏が20年ほど前に社長を退いた。次の10年はどちらが優勢になるか。業界の盟主争いは経営スタイルの戦いでもある。
(染原 睦美)
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