電力自由化でチャンス到来

 石炭火力のコスト競争力は、完全自由化した電力業界を生き抜く武器になる。今年4月の完全自由化で電力会社の経営環境は激変した。これまでJパワーは地域の電力会社への卸が義務付けられていたが、販売先は自由になった。販売価格に対する規制も撤廃され、自由な値付けもできる。新電力や日本卸電力取引所を含め、様々なプレーヤーに対してコスト競争力の高い電力を交渉して売れるようになったのだ。

 Jパワーにとって既存の電力会社は依然として大きな取引先であり、長期契約も残っている。ただ、「契約内容の見直しに取り組んでいる」と菅野等・執行役員経営企画部長は明かす。

 Jパワーは昨年、2025年度までの中期経営計画を発表した。海外事業の利益を反映するため、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に持ち分法投資利益を加味した同社独自の指標「J-POWER EBITDA」を策定。その指標で2014年度に1818億円だった利益を、2025年度には1.5倍の2727億円程度まで拡大する目標を掲げた。

 大間原子力発電所の建設や既存火力の建て替え、新設などで投資はかさむが、国内事業の利幅拡大や海外事業の収益を取り込んだキャッシュベースでは利益が伸びるとの読みが野心的な目標の根拠となっている。

 国内外で石炭火力を広げようともくろむJパワーにとって、最大の課題は環境対策だ。「石炭火力が脱炭素化の流れに逆らって生き残るのは難しいだろう」。地球環境戦略研究機関(IGES)の浜中裕徳理事長はこう指摘する。

 どんなに発電熱効率を高めても、石炭を燃やせば必ず二酸化炭素(CO2)が発生する。電気事業連合会によれば、一般的な石炭火力のCO2排出量は、ガス火力より6割近く多い。Jパワーの排出量は平均より少ないが、それでも3割程度多いのが実情だ。

 昨年パリで開かれた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、日本は2030年度までに温暖化ガス排出量を2013年度比で26%減らすと宣言した。これを既存石炭火力を稼働させたまま達成するのは難しい。

 Jパワーも手をこまぬいているわけではない。今年度末には中国電力と共同し、石炭ガス化複合発電(IGCC)と呼ばれる新方式の実証実験を広島県で始める。石炭を蒸し焼きにして作ったガスでガスタービンを回し、さらに排熱を利用して蒸気タービンを回す「1粒で2度おいしい」発電方式だ。ガス火力では主流になりつつあるが、石炭は固形物をガス化する手間がかかりハードルが高い。これが実現すれば、従来の方式よりもCO2を最大で15%程度、削減できる可能性がある。

 IGCCは東京電力などが既に福島県のプラントで実証しており、足元では商用発電所の建設計画も進んでいる。Jパワーは東電とは異なる方式の開発に取り組んだ。既存のIGCCが石炭をガス化する際に空気を吹き込んでいるのに対し、Jパワーは酸素を吹き込む方式の実用化を目指す。「どちらの方式も一長一短がある」(三菱日立パワーシステムズ)が、酸素吹きのメリットはCO2を分離回収しやすい点にある。

脱炭素の動きに抗う
●国の温暖ガスの削減目標とJパワーの対応策
新方式の石炭火力発電を試験する大崎クールジェン(広島県)。CO2を分離回収する実験も計画する

高効率石炭火力の新設、リプレースに大規模投資
▶鹿島パワー(運転開始予定2020年)、山口宇部パワー(同2020年代前半)を新設
▶竹原火力(同2020年)、高砂火力1号機(同2021年)、2号機(同2027年)を建て替え

新しい石炭火力の発電方式を開発
▶中国電力と共同で高効率が望める石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証実験を開始

CO2を分離して地中に埋める技術(CCS)の実用化
▶IGCCで実験(2019年を予定)