石炭と水力が大部分を占める
●Jパワーの電源構成(万キロワット)
石炭と水力が大部分を占める<br />●Jパワーの電源構成(万キロワット)

 これまで海外では天然ガスを使った発電事業が中心だったが、2020年にはインドネシアで石炭を使った大規模火力発電所が稼働する。タイでも天然ガス資源に限りがあることから、石炭火力の採用が検討されるようになってきた。実は石炭を使った発電はJパワーが最も得意とするところ。「チャンスは広がっている。国内の実績を見てもらいたい」と尾ノ井本部長は意気込む。

 実績の一つが神奈川県横浜市にある。出力120万キロワットの磯子火力発電所だ。高温で石炭を燃やすUSC(超々臨界圧)という最新方式を採用。発電熱効率(少ない燃料で効率的に発電できるかを示す指標)は約45%と、100万キロワットを超える大規模石炭火力で世界最高水準の効率を誇る。

<b>大都市圏に立つ磯子火力発電所(横浜市)。汚染物質の排出を抑え、世界最高水準の効率で運営する</b>
大都市圏に立つ磯子火力発電所(横浜市)。汚染物質の排出を抑え、世界最高水準の効率で運営する

 屋上に出て煙突を間近に仰いでも、煙を確認することはできない。硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質の排出量も磯子火力は世界最低水準。「発電熱効率の高さと環境対策を目当てに、ここには海外からの視察が引きも切らない」と小谷十創(じゅうぞう)所長は話す。

コスト競争力強みに自由化を乗り切る
●国内の大手電力会社との火力発電コスト比較(2016年3月期)
コスト競争力強みに自由化を乗り切る<br />●国内の大手電力会社との火力発電コスト比較(2016年3月期)
出所:みずほ証券

 日本はもともと、石炭火力の効率や汚染物質対策で世界最高レベルにある。中でもトップクラスなのがJパワーだ。一部には2世代前の効率の悪い石炭火力も残っていたが、昨年にはこれらを全て最新方式のものに建て替えると発表。新設する2つの発電所を加えると、2020年代には同社が持つ石炭火力の約7割(出力ベース)が最新方式のUSCになる。

 「石炭火力の高効率化に取り組むことは、当社の存在意義そのものだ」と技術開発を統括する村山均副社長は言う。日本の戦後復興から高度経済成長にかけて、Jパワーは大規模ダムと国内炭を使った火力発電で民間の電力会社を支えた。オイルショックが起きた1970年代以降は燃料価格の安い海外炭を使い、原油高で操業が難しくなった石油火力を補った。今も、石炭火力は同社の主力であり続けている。

 最新のUSC方式をもってしても、石炭火力は発電効率でガス火力に劣る。一方、発電コストや燃料の安定調達といった面では石炭火力がガス火力に勝る。天然ガスは中東などに資源が偏っているが、石炭は世界に普遍的に存在するため安定調達が可能だ。資源価格もLNG(液化天然ガス)を常に下回って推移しており、価格変動幅も小さい。足元ではLNG価格が下落しているが、それでも「石炭の燃料としてのコストメリットは失われていない」(みずほ証券の新家法昌シニアアナリスト)。

次ページ 電力自由化でチャンス到来