Jパワーが現地で提携するパートナー企業は、国営企業EGATとの関係が深い。EGATが出資する半官半民の発電会社EGCOと2000年初めに提携し、さらに同社が出資する企業と合弁会社を作り、16カ所の発電所を保有、運営するに至った。EGCOやその出資会社にはEGAT出身者も多く集まる。人と資本、双方のつながりを生かして入札などの情報を効率的に集め、さらに立地場所の選定や住民交渉で協力を仰ぐことで事業を拡大していった。

 「Jパワーは長い間我々に協力してくれた。今も我が国の電力安定供給に貢献している」。EGATのラタナチャイ・ナームウォン副総裁はこう評する。Jパワーがタイ電力業界に深く入り込むことができた背景には、50年にわたって続けてきたコンサルティング事業があった。

63カ国・地域でコンサル事業、6カ国・地域で発電事業を展開
●Jパワーの海外展開
注:各国の発電出力は持ち分の合計
海外事業を拡大
●国内外の発電能力比率

 国策会社として1952年に発足したJパワーの使命は、民間の電力会社では賄いきれない国内電力需要を担い、戦後復興と高度経済成長を支えることだった。基本的にこれ以外の事業を手掛けることは許されなかったが、例外がコンサル事業という名の海外技術協力だった。60年以来、50年間でエンジニアを派遣した国は計63カ国に上り、プロジェクトは350件を超える。

 海外で活躍したメンバーの一人が、現在国際事業本部長を務める尾ノ井芳樹・取締役常務執行役員だ。60年代、アンデス山脈に囲まれた南米ペルーの湖で、ダム建設をサポートした経験を持つ。「空気が薄くて難儀はしたが、標高3800mのベースキャンプで見た朝日は今も忘れられない」。その後もコスタリカやラオスなど新興国の僻地を渡り歩き、各国で発電所建設を支えてきた。

民営化でもうけ頭に変身

 長らくの間、海外事業の売り上げは小さく、業績への貢献度は大きくなかった。状況が変わったのは2004年から。民営化により国の軛(くびき)が外れ、事業の制限が緩和された。国内の電力需要が伸び悩む中、民間企業として成長分野をどこに定めればいいのか。浮かび上がったのが海外発電事業だった。

 「世界中に情報網と人脈を張り巡らしていたから、どこの国で、どんな種類の発電所が求められているのかを、容易に把握できた」(尾ノ井本部長)。これを生かし、タイ、米国、中国、フィリピン、台湾で発電事業を展開。ボランティアに近かった海外事業は収益事業に変わった。タイで大型発電所が相次ぎ稼働したことも貢献し、2017年3月期は海外事業が経常利益の約半分を占めるまで伸びる見通しだ。

海外事業が利益貢献
●Jパワーの連結業績
注:2014年3月期の海外事業利益は5200万円。2017年3月期の海外事業利益は本誌予想