例えば、ルノーの主要市場は欧州と南米で、近年はインドやアフリカ・中東でも2割近い販売増を勝ち取るなど存在感を増している。日産の主力市場は米・中・日。連合に新たに加わった三菱自も米・中・日に強いが、これにオーストラリアが加わり、さらにフィリピンやインドネシア、タイなど今後の成長が見込めるASEAN(東南アジア諸国連合)での知名度が高い。

 3社の強みが異なることは、販売網を生かし合えるだけでなく、「商品開発や生産面でもシナジーが望める」(三菱自でEV「i-MiEV」を生み出したOBで自動車コンサルタントの和田憲一郎氏)。

 商品開発面からそのシナジー効果を見てみよう。

互いの強みを共有できる
●商品開発における共有の仕組み

 ルノー・日産・三菱自連合では、まずは各社がそれぞれ持つ技術を共通のテーブルに出して並べ、これとは別に各社が今後の車両開発で実現したい技術案件のリスト(キャンディデートリスト)を見せ合う(右上の図)。

 その後、改めて共通のテーブルを眺め、実現可能性や時期、市場環境の動向などを鑑みた上で、リストのどれを優先させるか、さらに足りない技術は何で、誰が開発するかなどを決める。開発は共同で進める場合もあれば、その領域に強い会社が担当することもあるという。

 例えば、ルノー・日産の2社連合時代には、日産は得意のEV技術を先行して手掛ける一方、ルノーはディーゼルエンジンの開発を推進した。今後は、PHV(プラグインハイブリッド車)を商品化している三菱自の技術を、ルノー・日産で活用することも可能になる。

 ここで重要になるのは「各社が必ずウィンウィンになるようにする」(日産幹部)こと。誰かが一方的に技術を提供するようでは本当の意味でのアライアンスとは言わないからだ。これが1999年以来、ルノー・日産連合が培ってきたアライアンス成功のポイントだ。

シングルリーダーが決断

 事実、技術供与には難しさがある。例えば、2010年に米EV(電気自動車)ベンチャーのテスラに出資したトヨタ。豊田章男社長直下の開発組織を立ち上げたものの、16年末までに関係を解消した。理由は「方向性の違い」といわれているが、直接的なきっかけの一つはテスラによるトヨタへのバッテリー供給の打ち切りだったとされる。自社で積み上げてきた技術を他社に一方的に提供するのは、やはり難しい。

 もっとも、ウィンウィンの関係を構築すると言っても組織としての利害調整は当然、必要になる。そこでルノー・日産・三菱自連合では、「技術」「生産技術・サプライチェーン」「購買」「人事」の4領域で最終的な決断権を持つエグゼクティブバイスプレジデントを置いている。

 通称、シングルリーダー。例えば、技術のリーダーは日産副社長の山口豪氏で、早急に開発すべき技術を検討する中で各社の意見が食い違った場合は山口氏がトップダウンで決断を下す。

 生産面でのシナジー効果も小さくない。3社が世界各地に持つ生産拠点をあたかも“自社工場”のごとく使えるからだ。

 そのための仕掛けがプラットホーム(車体)や部品の共通化だ。いわゆる「モジュール化」で、独フォルクスワーゲン(VW)の「MQB(横置きエンジン車用モジュールマトリックス)」や、トヨタの「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」など、ここ数年の業界のトレンドとなっている。プラットホームや部品を共通化できれば、同じ工場で複数の車種を作れる。

 しかも、VWやトヨタは世界各地に自社で工場を構えて「地産地消」を実現する必要があるが、ルノー、日産、三菱自は、それぞれが保有する工場で自在に自社ブランドのクルマを送り出せる。例えば、日産は自社で工場を持たずとも、中東や東ヨーロッパ、南米のルノーの工場から日産車を提供できる。海外展開が遅れている三菱自も、この生産インフラを活用できれば、これまで以上に、様々な顧客層にアプローチできるようになる。

 1社ごとに見れば、VWやトヨタと比べて販売力や開発力では劣る3社が、互いの経営資源を活用して1社のように振る舞う“仮想大手”。3社それぞれが持ち味を発揮し、販売台数を積み上げなければ、部品の大量調達による購買費削減といったアライアンス効果も引き出せない。だからこそ、3社は商品の「顔」を徹底的に差異化するための工夫を凝らす。