顧客一人ひとりの趣味に徹底して対応したバス旅行で、シニアの心をつかみ、業績は堅調だ。インターネットの予約や販売が増える旅行市場で、添乗員によるサービスを極めたツアーで勝負する。旅行にとどまらず、介護、家事代行、そして認知症予防の研究まで、将来を見据えた種まきも怠りない。
<b>富士山の裾野を歩くバスツアー<br/>山歩きに詳しい講師と添乗員が同行し、初心者でも安心して参加できる行程にしている。全17回シリーズで、全部参加すれば富士山の裾野を一周できる</b>(写真=陶山 勉)
富士山の裾野を歩くバスツアー
山歩きに詳しい講師と添乗員が同行し、初心者でも安心して参加できる行程にしている。全17回シリーズで、全部参加すれば富士山の裾野を一周できる
(写真=陶山 勉)

 8月の平日。東京・上野を朝7時に出発したバスが、ツアー客40人を乗せて、静岡県・御殿場へと向かっていく。この日のツアーは「富士山すそ野ぐるり一周ウォーク」。参加者は、アウトドア用のカラフルなリュックを持ち、バスの中の会話も弾む。ウオーキングのツアーを専門にしているという添乗員は、先日登った山で見た高山植物について、参加者に語りかけていた。

 「このツアーの良いところは、神社や植物などについて歩きながら丁寧に説明してくれるところ。飽きないし、面白い」。参加した女性は笑顔で話す。

 このツアーは、富士山の裾野を17回に分けて歩くもので、今回は第5回でほぼ全員がリピーターだ。日帰りで1万1800円と決して安くはない。だが、添乗員のほか、富士山に精通して山岳ガイドの資格を持つ講師が同行。参加者に丁寧に説明する。地元の食堂に手配した昼食や歩いた後の入浴も、魅力となっている。

30以上のテーマで旅行を企画

 このツアーを企画して販売するのは、大手旅行会社クラブツーリズム(東京都新宿区)。近畿日本ツーリストをグループ会社に抱えるKNT-CTホールディングス(HD)の事業会社だ。

業界への打撃をはねのけ収益を確保
●クラブツーリズムの業績の推移
業界への打撃をはねのけ収益を確保<br>●クラブツーリズムの業績の推移
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 2015年度の売上高は1627億6900万円、営業利益は48億8000万円。旅行取扱額は約1714億円(観光庁調べ)で、うち約7割が国内旅行、3割が海外旅行だ。KNT-CTHDの稼ぎ頭でもある。取扱額は14位だが、他社にはない特色を持つ。それが、旅行ごとに明確なテーマを持たせている点だ。テーマ旅行とは、クラブツーリズムの定義によれば、行き先自体が目的なのではなく、何をするのが目的なのかを明確にした旅行を指す。

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