鶏肉などから鮮度とおいしさにこだわったスープを製造して、全国の飲食店に販売する。スープ作りで長時間労働が常態化しているラーメン業界の負担軽減に貢献する。

「このスープで、ラーメン店で働く人が家族とだんらんする時間を増やすことができる」。こう自信を込めて話すのは、業務用スープの製造と販売を手掛けるクックピット(東京都足立区)の本間義広社長だ。
ラーメンのスープと家族とのだんらん──。一見関係なさそうだが、実は人手不足にあえぐラーメン業界を救う可能性を秘めている。
おいしいラーメンのキモとなるのがスープ作りだ。一般に豚肉であれば、平均8時間は煮込む。焦げ付きなどを防ぐため、定期的にかぎ混ぜたり、火加減にも細心の注意を払ったりする必要があり、ラーメン職人は店から離れられない。
鮮度こだわり鶏舎内で製造
「営業時間も含めれば1日20時間近くを店で過ごしている職人もざらにいる。スープだけでも外部から調達できれば、労働時間を減らせる」と本間社長は話す。さらにスープ作りに関わる人件費やガス代も削減できるようになる。
クックピットは、こうした業務用スープを製造して全国に販売している。創業した2006年当時は30程度だった導入店舗数は徐々に増えて、今では900以上の店にスープを届けている。
●クックピットのスープの導入店舗数

クックピットの本間社長は、調理師の専門学校を卒業した後、和食の料理人として修業し、大手外食企業に勤めた経験を持つ。その後、博多とんこつラーメンのおいしさに魅せられて、ラーメン業界に入った。アルバイトから始めて独立し、多店舗展開も手掛けた。その過程で、業界全体の慣習となっている長時間労働に疑問を抱く。そして業務用スープの開発に携わり、49歳でクックピットを創業した。

ラーメン店はカウンターだけの居抜きであれば100万円から開業できるため、外食業界の中でも参入障壁が低い。だが、競争が激しく、1年で3000~4000の新店が生まれる一方で、同じ数だけ閉店していくといわれる。外食業界全体で人手の確保が難しくなっており、特に長時間労働が常態化しているラーメン店には働き手が定着しないという構造問題も抱えている。
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