創業した橋本正社長は京都大学で量子化学を学び、分析装置大手の米ウォーターズなど外資系企業に勤務。その後、大塚製薬に転じて医薬品や健康関連商品の事業に携わり、日本コカ・コーラに移ってR&D(研究開発)を統括するグループ会社のトップも務めた。

 「自分の研究を健康に役立つ分野で応用できないか」。大学時代からの思いを実行しようと決意したのは日本コカ時代。健康寿命を延ばせる安全な素材を探し出し、ビジネスとして育てようと、退社後に起業に踏み切った。

 役立ったのはビジネスマンとして培った人脈と技術だ。抗加齢医学研究の第一人者として知られる大阪大学大学院の森下竜一教授らから提案を受け、クルクミンに着目。その有効性の一方で活用には高いハードルがあることを知り、研究に乗り出した。

 当初は試行錯誤が続いた。クルクミンを界面活性剤などに溶かした溶解液を数十種類試作したものの、「溶けにくい、粘度が高く投与しにくいなどの課題がありいずれも失敗した」(橋本社長)。温度を上げて流動性を高めたタイプなども試したが、実験用のラットがやけどをするなどうまくいかなかった。

売上高の8割が海外

 状況を打開したのが前職での知見だ。日本コカ時代に研究していた素材の微粉砕技術や物質を吸収されやすく加工する製剤化技術を活用することで、粉末状のまま水などに溶けやすく、安定した状態に保てることを発見。改良を続け、吸収性や耐久性を高めていった。2007年9月の研究開始から半年程度で実用化に成功した。

 製品化の知らせは大学の研究者らに驚きをもって迎えられ、共同研究の誘いが次々に入るようになった。京都大学や秋田大学とはすい臓がん・胆道がん、慶応義塾大学病院とは悪液質。大学や医療機関との臨床試験を重ね、完了した試験は20、現在進行中の試験は17に上る。

 徳島大学などとは大腸ポリープからのがん化予防に関して国内最大規模の試験を実施中で、米国最大のがん病院群であるCTCAとも共同研究するなど、その広がりは国内にとどまらない。

 クルクミンの新たな有効性も期待されている。がんやメタボリックシンドローム、動脈硬化など多くの疾患の重症化をもたらす「慢性炎症」を抑制する効果についての解明も進んでいる。橋本社長は「慢性炎症を基盤とした疾病への対策に、セラクルミンが大きな役割を果たせるようになる」と期待する。