1つ目が、「ツイッターファースト」だ。テレビをはじめとするマスメディアだけでは、マクドナルドの主要顧客であるデジタル世代の若者にリーチしきれていなかった。さらにはチキン事件でブランドへの信頼を大きく毀損したこともあり、会社がマスメディアを通じて発する一方向な情報では十分な効果を期待できなかった。
とはいえ、足立本部長は通常のウェブ媒体や、SNS(交流サイト)のフェイスブックやインスタグラムなどの効果も疑っていた。ユーザーの投稿内容に「いいね!」が付いたとしても、その情報は基本的に友達同士でしかシェアされない。唯一、情報が大量に拡散する可能性があるのがツイッターだった。足立本部長は「我々にとって、情報は拡散しないと意味がない。『ツイッター離れ』という人もいるが、発信力がありトレンドを生み出す10~20代の若者はツイッターを使っている。まさにそこが狙い目だった」と説明する。
16年以降、ハンバーガーなど商品のパッケージを変えたのも、ツイッターでの拡散力を高めるためだ。思わずスマホで写真を撮り、友人や家族に伝えたくなるデザインに一新した。
「かつての広告・宣伝では、マスメディア、インターネット、パッケージなどを含むオウンドメディア(自社メディア)の順に重視していた。今はこれを逆転させている」と足立本部長は話す。パッケージなどで話題のネタを仕込み、ツイッターでまずは若者に拡散させてブームに火を付け、最後にテレビ広告などでより幅広い消費者に広げている。
そして、キャンペーンを毎週実施することで、このサイクルを高速回転させた。それが2つ目の柱である。
例えば、15年と16年ではキャンペーン総数はほぼ同じだが、15年は月ごとに複数のキャンペーンを同時に実施していたのを、16年以降は可能な限り毎週に分けてキャンペーンを打ち出す戦略に転換している。今年4月の場合、5日に「グラン」シリーズ、14日に「トミカ」や「リラックマ」の玩具が付いた子供向け「ハッピーセット」の販売を始めるといった具合だ。
ただし、こうした期間限定商品のキャンペーン強化だけでは不十分だ。「ビッグマック」や「マックフライポテト」といった定番商品が売上高の約7割を占めているからである。そこで足立本部長は、定番商品でも意表を突く企画を仕掛けることでテコ入れした。
16年1月に始めた「マックチョコポテト」はその典型例で、フライドポテトとチョコレートという意外な組み合わせで話題をさらった。同年6月に開始した「マックの裏メニュー」では、「てりやきマックバーガー」などの定番商品にハラペーニョやクリームチーズソースなどをトッピングできるようにし、定番3種のバーガーで285通りの楽しみ方を提供した。今年6月からは、愛知県や岐阜県など東海地区の店舗で、100円を追加するとパティが2倍になる「夜マック」を展開している。ビッグマックなら通常の2枚から4枚だ。
「再建中だからこそ思い切ったことができた」と話すのはメニューマネジメント部で商品開発を担当する若菜重昭上席部長だ。こうした企画は以前も社内で検討されたり、実際に発売されたりしたこともあった。だが、ツイッターなどを使った新たなマーケティング手法によって、その企画の面白さがよみがえった。足立本部長は、「ツイッターがなければここまで早い復活は望めなかっただろう」と言う。
再構築2 フランチャイズ 第5期ビジネスモデルへ
今年7月、米国映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」が日本で公開された。レイ・クロック氏が事実上創業した米マクドナルドが、地域密着型のFC(フランチャイズチェーン)の仕組みで事業を急拡大させていった様子が描かれている。そして、日本のマクドナルドもまた、このFCのビジネスモデルを再構築したことが、2つ目の復活のカギだった。
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