島村琢哉社長に聞く
コア事業伸ばす買収を

──2016年1~6月期の営業利益は期初予想を大幅に上回りました。
「これまでやってきた収益構造の見直しがうまくいって、まずはほっとした。欧米の高機能ガラスの需要が回復してきていることも大きい」
「中期経営計画の営業利益目標はまだアナリストから疑いの目を向けられているが、達成できると信じている。メキシコの自動車ガラス工場やインドネシアの化学工場など、これまでまいてきた成長のタネが本格的に動き出すからだ」
──新たな戦略事業3分野はどのように決めたのですか。
「まずは一般に成長産業とされる分野を6つピックアップして、その中で旭硝子のコア技術や顧客基盤が生かせるものは何かを考えた。結局、自分たちの原点、強みは何なのかを考えることが全てだ。それを認識していれば、どんな環境変化にも対応できる」
「モビリティー以外でも、エレクトロニクス分野では高シェアの色補正フィルターがビッグデータ時代のセンシングに役立つと考えている。ガラスを使ったデジタルサイネージも期待値は高い」
「ライフサイエンス分野では、以前の成長事業だったフッ素化学の技術をベースに、オーダーメード医薬品などニッチな市場に切り込んでいく」
──次世代車でガラスが存在感を示すための課題は何でしょうか。
「1つ目はアフターケアの体制を整えていくことだ。ガラスを高機能化していく上で、どんな地域でも迅速にトラブルに対応できる機能が必要になってくる。昨年ポーランドで補修ガラス製造会社を買収したのもそういった狙いからだ」
「2つ目は成長市場を押さえること。モロッコの自動車ガラス工場の新設を発表したが、将来的には中東・アフリカのマーケットもしっかり取っていきたい」
「特に注目している国はイラン。豊富な石油資源、高い教育レベル、7000万を超える人口。マーケットとしても、生産拠点としても魅力がある」
──M&Aを想定した3000億円の投資枠をどう活用していくのでしょうか。
「新分野に進出するようなとっぴな買収はやらない。あくまで今あるコア事業を地道に伸ばしていく。既に3000億円を超える買収案件のリストはできている」
(日経ビジネス2016年9月5日号より転載)
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