成長へのターニングポイント

ガラスが活躍する領域を拡大していく
●旭硝子が描くクルマの未来図
ガラスが活躍する領域を拡大していく<br/>●旭硝子が描くクルマの未来図
(写真=早川 俊昭)
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 旭硝子の設備の稼働率は高い状況にあるが、中国からの輸入品の流入増が今後価格を押し下げる可能性は高い。固定費の占める割合が大きいガラス事業の採算を高めていくには、ガラスの高機能化を推し進めていくほかない。

 「今年は新たな成長ステップに踏み出すターニングポイント」(島村社長)。そこで旭硝子は今年2月、「2025年のありたい姿」を発表した。長期経営ビジョンを公表するのは初めてだ。

成長のけん引役はフッ素、液晶と変遷してきた
●連結売上高と営業利益の推移
成長のけん引役はフッ素、液晶と変遷してきた<br/>●連結売上高と営業利益の推移
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 建築用ガラスや基礎化学品を安定的なコア事業に据える一方、今後の成長を担う高収益の戦略分野を3つ掲げた。次世代車や交通インフラ向けの「モビリティー」、光学機器や半導体関連部材など「エレクトロニクス」、先進医療分野の「ライフサイエンス」だ。

 この3分野を中心に5年間で1兆3000億円の投資枠を設定。技術開発や設備更新に各年2000億円、M&A(合併・買収)などの戦略投資に3000億円。投資を通じて2025年に約2300億円の営業最高益更新を目指す。戦略3分野の営業利益は約900億円と2015年度比の6倍以上に引き上げる。

 中でも売上高の4分の1を占める自動車分野の比重は大きい。2011年以降の冬の時代にも安定的に売上高を伸ばしてきた。経産省の推計では、2013年の自動車ガラスの世界シェアは22%とトップに立つ。富士経済が昨年発表したリポートによると、ガラス・樹脂による自動車の透明部材の市場は2019年で4兆6457億円。2014年比で16.6%増と堅調な伸びを見せる。

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