2つの要求を満たすのは容易ではない。アンテナ設計を外注する自動車メーカーも増えるとみられ、それが旭硝子の商機となる。実際、今春には、先行車両の自動追従など運転支援機能が搭載された独ダイムラーのメルセデス・ベンツEクラスで、旭硝子のガラスアンテナの採用が決まった。欧州の自動車メーカーは羽根型のカバーにアンテナをまとめた「シャークフィン」を採用する会社が多いが「デザイン性の問題から、ガラスアンテナへの需要が高まりつつある」(宮川氏)という。

液晶の不振と設備過剰が課題

電子事業は収益縮小、車載ガラスが次の柱の一つに
●営業利益の事業別構成
電子事業は収益縮小、車載ガラスが次の柱の一つに<br/>●営業利益の事業別構成
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●新たな戦略事業3分野
●新たな戦略事業3分野

 旭硝子の2015年12月期決算の売上高は前期比1.6%減の1兆3262億円。営業利益は同15%増の711億円。欧米の生産拠点の統廃合などリストラ策が奏功し、ガラス事業が4年ぶりに黒字転換。営業増益は5年ぶりだった。2016年度上半期も減収・営業増益となった。

 しかし、来年度を最終年度とする中期経営計画に掲げた1兆6000億円の売上高目標の達成は望み薄。1000億円以上としている営業利益の達成は「可能性が見えてきた」(島村琢哉社長)とはいえ、確実ではない。

 2つの経営課題が立ちはだかる。一つは液晶ガラス基板事業の不振だ。

 液晶基板は2000年代前半から、フッ素樹脂に代わる成長のけん引役となった。同基板を手掛ける電子カンパニーは2010年度に1899億円の営業利益をたたき出し、旭硝子の最高益更新の立役者となった。しかし液晶パネルの汎用化と共に液晶基板の価格が急落、電子カンパニーの営業利益は2015年度に290億円と5年前の6分の1以下、営業利益率は4分の1に落ち込んだ。

 もう一つの課題は、基礎材料である板ガラスの生産設備過剰だ。経済産業省は昨年6月、2030年度に国内の生産能力の4~5割が余剰になるとするリポートを発表。旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子の国内3社に生産設備を共同運営するなど統廃合を促した。

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