空きビルなどを有効活用

 どうしてカプセルホテルに着目したのか。同社はもともと、建築設計などを手掛けるプランテックグループ(東京・千代田)から分離された会社だ。

 建築士でもある来海社長は、顧客からのビルの有効活用や商業施設の再生に関する相談に長年乗ってきた。顧客の悩みを聞く中、人口減少によってテナント不足の慢性化、空きビルの増加が大きな社会問題になると確信した。

 商業施設やオフィスビルはすでに飽和状態にある。様々な検討の結果、ビルを生かすにはカプセルホテルへの転用が役立つと判断。2006年にファーストキャビンを立ち上げた。

 旅館業法でカプセルホテルは「簡易宿所」に分類される。ホテルや旅館より狭くてもよく、窓の有無などの設置基準もあまり厳しくないのが特徴だ。

 これならば大規模な水回り工事などは必要ない。ビルの構造を大きく変えずに低コストで転用でき、着手から開業まで1年程度でこぎ着けられる。不動産の有効活用を探る顧客にとって、魅力的な提案が可能になる。

 また宿泊機能に特化したビジネスホテルと、宿泊料金3000円前後の旧来型カプセルホテルの中間に当たる業態がすっぽりと抜け落ちており、ここにも参入の余地があると見た。

店舗数増加と堅調な稼働で業容が拡大
●ファーストキャビンの売上高
店舗数増加と堅調な稼働で業容が拡大<br /> ●ファーストキャビンの売上高
注:2016年3月期は決算期変更に伴い、6カ月の変則決算

 折しも、訪日外国人客の急増を背景に、大都市でホテルの宿泊料金が高止まり。そこでコストパフォーマンスを重視する顧客層を取り込もうと、立地に応じて1泊4000~7000円台の価格帯で勝負することを決めた。

 1号店はスポーツジム撤退後の空きフロアを転用した大阪の店舗。当初は既存ビルの転用が中心だったが、冒頭の京橋店のように最近の宿泊施設では新築物件も目立つ。投資効率の良さが評価されているからだ。

 店舗ごとの経営形態にもよるが、運営受託や予約システム管理などでファーストキャビンは収入を得る。

 実績を評価する大手企業などから引く手あまただ。貸し会議室を運営するティーケーピーや、多くの遊休不動産を保有する西日本旅客鉄道(JR西日本)や阪神電気鉄道と相次ぎ提携。カプセルホテルでありながら大企業のブランドを損なわない高級感や清潔感が評価されているという。

 今後10店舗の新規出店が固まっており店舗網の拡大は加速。18年3月期の売上高は前期比で約2倍の30億円超を見込む。当面の目標は20年に国内50店舗体制。海外展開も視野に入れる。

<span class="fontBold">既存ビルの有効活用策としてカプセルホテルに着目した来海忠男社長</span> (写真=大槻 純一)
既存ビルの有効活用策としてカプセルホテルに着目した来海忠男社長 (写真=大槻 純一)

 カプセルホテルである以上、ファーストキャビンにも弱点はある。例えば客室と通路は1枚のカーテンで隔てられているだけで施錠はできない。構造上、隣室に音が漏れやすく、テレビの視聴にはヘッドホンが必要だ。

 だが通常は弱点であるコンパクトさを逆手に取って、どこか遊び心を感じさせる空間を演出。収益性と顧客満足の二兎を追う戦略は巧みなバランスの上で成り立っている。

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