飛行機の上級クラスの座席や空港の特別ラウンジをイメージした宿泊空間を提供する。「安くても、狭くてくつろげない」というカプセルホテルのネガティブな印象を拭い去り、急成長する。

(日経ビジネス2017年8月28日号 68~69ページより転載)
余裕を持たせた空間
●空港の特別ラウンジのような洗練された内装にこだわり。カプセルホテル特有の窮屈さを感じさせない空間設計も魅力
余裕を持たせた空間<br /> ●空港の特別ラウンジのような洗練された内装にこだわり。カプセルホテル特有の窮屈さを感じさせない空間設計も魅力
(写真=大槻 純一)

 「出張の際によくファーストキャビンを利用する。カプセルホテルとは思えないお洒落(しゃれ)な内装と手ごろな価格が気に入っている」。6月下旬にカプセルホテル「ファーストキャビン京橋」(東京・中央)を訪れた関西在住の32歳の会社員はこう話す。

 建物は大通りから1本入ったところに位置し、周囲にはオフィスビルや店舗がひしめく。4月に開業したばかりで、客室数は238と同社最大の規模。ファーストキャビンは大都市や空港に計13店舗を展開している。

 特徴はまず立地。現在はどの店舗も最寄り駅から歩いて5分以内という。京橋店はJR東京駅から徒歩5分で、30~40代のビジネス利用が中心だ。

エレベーターは男女別

 チェックインの際、カウンターでは入館やエレベーター操作に用いるセキュリティーカード、各部屋に備え付けのロッカー用のカギ、テレビの視聴時に使うヘッドホンの3点セットを手渡される。客室フロアへ向かうエレベーターは男女別で、男性用は男性フロアにしか止まらない。浴室は上層階にある大浴場を利用する仕組みだ。

 通常、カプセルホテルは狭くて、2段ベッドの場合もあり、値段こそ格安でも、実際に宿泊するには抵抗のある人も少なくないだろう。

 だがファーストキャビンは一般的なカプセルホテルとは印象が異なる。理由はユニークなコンセプトにある。キャビン(飛行機などの客室)と社名にある通り、飛行機の上級クラスの座席や空港の特別ラウンジをイメージした洒落た内装で、カプセルホテルであることを顧客にあまり意識させない。

 京橋店にはファーストキャビンが標準展開する「ビジネスクラス」(基本料金1泊6700円)や「ファーストクラス」(同7700円)と称する客室がある。

 両者の違いは、ビジネスクラスはシングル、ファーストクラスはセミダブルのベッドが置いてある点。どちらも室内の高さは210cmを確保しており、筒に身を押し込むような、旧来型のカプセルホテル特有の圧迫感はない。

 「立ち上がれるのはすごく大事」。来海忠男社長はそう説く。旧来型カプセルホテルのように2段ベッドで横幅も狭くすれば、面積当たりの客室数は増やせる。だが「収益性ばかり追求してわずかな空間を惜しみ、快適性を犠牲にすれば顧客に支持されない」(来海社長)。このコンセプトが当たり、ファーストキャビンの稼働率は9割を誇る。

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