「せめて20年は先を見たい」

 「清水さんの話は大変面白いし、20年後の話も結構です。だけど、20年後にあなたは不二製油にいますか」。事業部長時代、清水氏が中期計画の説明をすると、役員がこう質問したという。「ご本人は真面目に聞いてるんです。『自分でできないことまで言うのはどうなの』と。すごく分かるんですけど、そんなこと言うたら経営にならんのですよ」。

 かつて、不二製油の経営基本方針は「不断の革新を断行せよ」だった。今や年商約3000億円の大企業となり、「目の前の仕事を真面目にやる」姿勢が目立ってきた。「夢を持てる研究をしたくて、安定化DHAではゼロから1、1から100を狙った」という加藤シニアマネージャーは、最近では異色の存在だ。

海外事業の利益貢献が拡大
●清水社長就任前と現在の営業利益を比較
海外事業の利益貢献が拡大<br />●清水社長就任前と現在の営業利益を比較
注:かっこ内は営業利益の海外比率

 創業以来、技術畑の社長が続いていた同社で、清水社長は初の営業出身。役員時代も“待命ポスト”には就かなかったので、前社長の海老原善隆氏に「次をやってほしい」と指名を受けて驚いたという。「数時間考えて引き受けました。私を選ぶということは、今のままではアカン、ということやろ。そやったら、思い切って変えよう、と」。

 歴史の趨勢、人口減に押し流される前に、清水社長が携わった「技術で市場を作る」経験を広げねばと、海老原氏も清水社長も考えたのだろうか。

 2015年には地域別の責任を明確にすべく持ち株会社制に移行し、海外展開を進めてきた清水社長。国際化を進めれば為替の影響を受けにくくなるという期待もある。2030年の「ありたい姿」は、「売上高5000億円以上、営業利益率10%以上」という高い目標だ。

 従来の延長線上では到底届かない目標を掲げる最大の理由は、人材のコモディティー化を食い止めることだろう。組織の意識変革を促すためにも、USS製法と安定化DHA・EPA事業の成功が待たれる。

<b>安定化DHA・EPAを使ったメニューの例(上の写真の全てに使用)。</b>
安定化DHA・EPAを使ったメニューの例(上の写真の全てに使用)。
<b>USS製法の素材を使ったティラミス「ティラティス」で、再びブームを狙う</b>
USS製法の素材を使ったティラミス「ティラティス」で、再びブームを狙う

(日経ビジネス2016年8月22日号より転載)