改めて業績を振り返れば、重心はCBEとチョコに移ったが、原料は輸入品で、利益は為替や商品市況に揺さぶられて上下動が激しい。海外進出を進めるにしても、結局は「売れる技術」が生み出せるかどうかが最大の問題だ。
●部門別営業利益の推移

技術でヒットを生むには、新しい市場を作り出す構想が必要だ。それを清水社長流に言い換えたのが「おいしさと健康」。「 “健康になる食べ物”には大きな市場がある。でも、おいしくなかったら続けて食べてくれない。それを両立するのが、技術力」(清水社長)。
そう語る清水社長が大きな期待をかける新技術が今、2つある。
技術を「健康」で売る
一つは、2012年に公開した豆乳をクリームと低脂肪分に分離する「Ultra Soy Separation(USS)製法」。開発当時、蛋白加工食品カンパニー長だった清水社長が今日まで強力に推し、同社の変化の象徴にともくろむ技術だ。
同社が特許を持つこの製法で作られた、濃厚なコクを持つ豆乳クリームは、デザートや和洋食で生クリームの代わりに使え、新しい味を生み出す。低脂肪豆乳も「呈味作用」と呼ばれる、塩味やうまみを強化する作用を持つ。
不二製油はメーカー、レストラン、和食店などを集めた団体「まめプラス」を結成し、クリームや低脂肪豆乳を使用した各店のレシピやメニューを広く公開。豆腐のトップメーカー、相模屋食料と、USS製法の素材を使用した製品を企画・販売する会社、「だいずオリジン」を共同設立し、ヒットに挑む。
もう一つは今年6月発表の「安定化DHA・EPA」。DHA、EPAは厚生労働省お墨付きの健康効果が認められる魚油由来の成分だが、空気に触れるとすぐ劣化し悪臭を放つので、カプセルに入れてのみ込む形で摂取されてきた。
不二製油・未来創造研究所の加藤真晴シニアマネージャーは、DHA、EPAと微細化した難溶性抗酸化成分を混ぜて再調整することで、牛乳や菓子などの食材に含ませることを可能にした。発表会には食品メーカーの担当者が詰めかけ、「久々の“10年に1度”の技術になると期待している」(前田常務)。
営業の足回りも強化中だ。今年4月の機構改革では、事業分野別からクライアント別に営業を編成した。これまでは手付かずだった外食業界などにも売り込んでいくためだ。
「外食業界で営業をかけると『ガソリンスタンドさんが何の用でしょう』と真顔で言われるほど知名度がない。一方で、製菓・製パン用の普通の技術が驚かれる。可能性は大きい。USS製法の豆乳クリームなどを武器に、この市場を開拓していく」(不二製油営業第三部の松矢裕之・第一課長)
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