BtoBtoCメーカーになりたい

<b>清水洋史社長は2014年からマーケティング本部長も兼務した</b>(写真=今 紀之)
清水洋史社長は2014年からマーケティング本部長も兼務した(写真=今 紀之)

 日本企業が悩む商品のコモディティー化に、技術で抗ってきた不二製油HD。だが、2013年に社長に就任した清水洋史氏は、「意図してこうなったのではなく、創業時の経営陣のDNAという遺産と、人口増という歴史の流れに乗った結果ですわ」とシビアに見る。

 「高度成長期は人口の伸びに合わせて、お菓子や加工食品の需要が増え、NB(ナショナルブランド)が次々と大型の新製品を開発し、我々も大きくなれた。1990年代に入ると、コンビニとPB(プライベートブランド)商品の開発で組むことができた」(清水社長)

 BtoBメーカーの不二製油には、NBのようなブランドへのこだわりがなく、かつ技術があり、コンビニにとってPB開発の相手にはもってこいだった。

コンビニの隆盛で成長
●不二製油グループ本社の業績推移
コンビニの隆盛で成長<br />●不二製油グループ本社の業績推移
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 「でも、日本の人口はピークアウトして減ってきている。もう、これまで先輩たちが作ってくれたビジネスモデルでは通用しまへん」

 なぜか。同社が培ってきた技術力は、基本的に「クライアントから様々な要望を受けて、それを“独自のやり方で”かなえる」スタイル。顧客の商品開発に付いていくことで、時代の変化に対応してきた。

 清水社長は、営業の社員として業務用チョコレートを売っていた頃、得意先の細かい要望に振り回されながら「うちの会社は、他社が断るむちゃな注文にひたすら応じることを、技術力だと思っていないか」と疑問に感じた。

 景気の低迷と少子高齢化で、国内の食品市場は元気がない。「新製品は今も大量に出る。だが、どれも小粒で寿命が短く、そのメーカーの看板商品に取って代わるものがない」と、国内を担当する不二製油の営業社員も研究開発者も口をそろえる。従来のように、「顧客任せ」で大ヒット商品の誕生を待っていては、成長は難しくなった。

 ではどうするか。「BtoBで完結するメーカーは存在しない。顧客の先にお客さんがいる『BtoBtoC』メーカーとして、こちらから取引先に、コンシューマー向けヒット商品のタネを提供していく会社にならんと」と清水社長。

 実は同社には、「ティラミス」を自ら仕掛けて大ヒットさせた実績がある。日本では無名だったイタリアの洋菓子を、製法から素材まで合わせて製菓業界に紹介し、女性誌「Hanako」が大きく取り上げて大ブームとなった。だが、それも27年も前のこと。その後も数々のデザートで挑戦したものの、ティラミス級のヒットは生まれなかった。

 「会社が大きくなるにつれ、頭はええけど、失敗を極端に嫌う社員が増えてきた。提案型で収益源になった技術は、88年に完成した水溶性大豆多糖類以来、出ていないと思う」(清水社長)

 ソヤファイブにつながった水溶性大豆多糖類は、開発は1年で完了したが、飲料メーカーから受注するまで5年を費やした。当時、開発に当たった前田氏と組んで、営業担当として用途開拓に取り組んだのが清水社長だ。「いつまで無駄なことをやっているのかと、5年間さんざん𠮟られた」。失敗を恐れていてはヒット商品が生まれないことを、実体験で知っている。

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