中でも大きな収益源はチョコレート。原料のカカオバターの代替となるチョコレート用油脂(以下CBE)では国内トップシェアで、世界の3大メーカーの一角を占める。CBEを原料にした業務用チョコレートも生産しており「チョコの販売高では、コンシューマー向け3位の江崎グリコと並ぶ規模と推定される」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の角山智信シニアアナリスト)。

 油脂の原料調達の関係から海外展開も早く、1981年にはシンガポールで現地生産を開始。最近始まった、日本の菓子メーカーのアジアへの工場進出に先駆ける形になっている。2015年6月にはブラジルの業務用チョコレート最大手ハラルドを約240億円で買収した。アジアと合わせて、新興国の需要拡大を見越し「オセロ盤の角に石を置いた」(不二製油HDの酒井幹夫常務・最高経営戦略責任者)格好だ。

 BtoBという業態のため、社名が表に出ることは少ないが、同社は、コンビニや、数多くの日本の食品メーカーにとって、なくてはならない黒子であり、隠れた高収益企業なのだ。

最後発からもがいて武器磨く

 不二製油HDの前身である「不二製油」は、1950年、伊藤忠商事系の繊維商社の蚕糸会社から分離した、植物系の油脂メーカーとして創業している。

 同業には戦前からの大企業が多い中、最後発で、菜種や大豆などの主要原料は先発組に押さえられて手に入らず、当時あまり日本で使われていなかったパームに目を付けた。しかし、多様な油脂が混じるパーム油から、必要な成分を分離するのが難しく、試行錯誤を繰り返した。これが、同社の「分ける」技術を鍛えることになる。

 製品はできたが、ブランド力の無さからBtoC市場では売れない。そこで油を大量に使う米菓メーカーに「熱安定性」「油ぎれ」という“性能”で売り込みに成功し、発展の足がかりをつかむ。

 こうした創業時の経験が「新しいモノを開発して市場を切り開く、という我々のDNAになった」とCTO(最高技術責任者)の前田裕一常務は語る。研究開発に注力し続けた結果、食品化学分野での国内特許取得件数(2014年)は97件と「全体の4%で、日本一」(同)。

事業構成は3分野に分かれる
●部門別売上高構成比(2016年3月期)
事業構成は3分野に分かれる<br />●部門別売上高構成比(2016年3月期)

 同社の技術力を前田常務は「機能性のある成分を分ける技術、成分に新しい機能を持たせる再調整技術、そして“もったいない精神”」と要約する。

 例えば、同社の最重要技術とされる「酵素エステル交換」(1982年に特許取得)。サフラワー油など汎用の油脂を、分子レベルで配列を組み直す(再調整)ことで、先ほど触れたチョコレート用の油脂、CBEを作り出す。

 チョコレートの原材料であるカカオバターと代替が可能なCBEは、食用油より数倍高く売れる。しかも「チョコが何度で、どのように溶けるか」といった最終商品の特性を、CBEの調整で作り出せる。同社はこれを武器に、菓子メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)的な役割も引き受け、製菓店を含めた業務用チョコレートの市場に業容を広げた。

 もう一つの「もったいない精神」は、分離して使わなかった成分も、どうにかして売れないかと考え抜く姿勢につながった。典型は、冒頭で紹介した「ソヤファイブ」。もともとは、脱脂大豆から大豆たんぱく製品を作った後に残る「おから」の処理に悩んだことが開発のきっかけだった。「こちらがお金を払って飼料用に引き取ってもらっていた。これではもったいないと、87年から開発に着手した」(前田常務)。

 おからから水溶性の大豆多糖類を分離したところ、水に溶けたたんぱく質粒子の沈殿を防ぐ機能があることを発見。乳酸菌飲料の分散・安定剤としての販路が見つかった。麺や米飯のほぐれ剤としても使え、主要製品が中国メーカーの追撃で収益悪化に苦しむ大豆たんぱく部門の新たな柱となっている。

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