コンビニエンスストアの食品や、菓子、パン、加工食品メーカーの商品を技術力で支えている。大手油脂メーカーがコモディティー化で収益悪化に苦しむ中、独自路線で成長してきた。技術系から交代した営業系の社長が、人口減と大企業病に挑む。

(写真=3点:陶山 勉(チョコパン、チョコケーキ、乳酸菌飲料))
(写真=3点:陶山 勉(チョコパン、チョコケーキ、乳酸菌飲料))
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 コンビニエンスストア(コンビニ)に入る。暑い季節はざるそば、冷やし中華、それとも定番のおにぎり。甘味ならば、アイスクリームにチョコレートバー、ドーナツ、生クリームケーキ、抹茶チョコ、ついでに乳酸菌飲料、インスタントラーメン…。これらの商品に使われているのが、不二製油グループ本社(以下不二製油HD)の製品だ。

 同社の製品が使われる商品は幅広い。クリーム、チョコレート、マーガリン、パン生地、アイスの素材、ビール酵母を発酵させる大豆ペプチド、ハムの「つなぎ」。上の写真は使用製品の一端だ。

 不二製油HDは「食感、品質や生産性を向上させたい」という食品・飲料メーカーの要望に応え、パームや大豆などの植物から「機能」を引っ張り出して提供するBtoBメーカーだ。

食品メーカーを技術で支える

 例えば、コンビニなどで売っている冷麺類に「ほぐし水」が添えられていることがよくある。かけると、麺がほぐれて食べやすくなる。この効果は水ではなく、麺の表面の「ソヤファイブ」によるものだ。大豆の「おから」から同社が作った水溶性大豆多糖類で、米飯や麺類の水分を保持し、粘りを抑える働きがある。それまでは麺どうしがくっつくのを避けるために、ひと口ごとに小分けにしていたが、その手間が不要になり、生産性が上がった。

 おにぎりの場合も水分を1割強多くできるので、生産個数が増やせるうえ、食感も向上。でんぷんの老化が抑えられることで、冷蔵したり時間がたったりしてもおいしく食べられる。

 このほか、「手に付かず口中ですっと溶ける」チョコレートや、輸送中に形状が崩れにくいクリームなど、メーカーやコンビニの細かい要望に応えることで、製品のコモディティー化に苦戦する油脂メーカーの中では飛び抜けて高い利益率を確保している。

BtoC企業並みの高い利益率
●取引先、同業他社との比較
BtoC企業並みの高い利益率<br />●取引先、同業他社との比較
注:円の大きさは総資産の比率を表す。決算期は2016年3月期、山崎製パンのみ2015年12月期を使用

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