「昔は保険会社」といわれたい

 ただし、デジタル技術を取り入れた事業変革には順風ばかりが吹くわけではない。SOMPOでは、損保、生保、介護、海外という4部門が傘下にグループ企業を持つ。そこに横串を通す形でCDOやCFO(最高財務責任者)といった機能軸の責任者が各部門をみる。収益責任を負う部隊と横串で改革を推進する部隊との間に利害が食い違う場面も当然ある。

既存事業とCDOなど横串組織が一体となって革新を起こす
●SOMPOホールディングスのマトリックス型組織
既存事業とCDOなど横串組織が一体となって革新を起こす<br /><b>●SOMPOホールディングスのマトリックス型組織</b>
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 実際、現場ではデジタルでの効率化などに“異論”も漏れる。例えば排尿センサーについて、ある介護現場では「中には機器を使わないで機能回復を図った方がいい人もいる。効率化だけがいいわけではない」との指摘が聞かれる。

 だが、桜田社長はぶつかり合いをむしろ歓迎している。「そういう摩擦が会社によりよいエネルギーをもたらす」と考えるからだ。

 「『昔、SOMPOは保険会社だったらしい』と言われたい」。桜田社長の口癖の一つである。デジタル技術を活用した変革を進めるSOMPOが会社の姿を変えられるのか。改革は新たな段階を迎え、さらに続いていく。

INTERVIEW
桜田謙悟グループCEO社長に聞く
顧客と接する時間を増やしたい
<b>1978年4月、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン日本興亜)入社。2010年7月、損保ジャパン日本興亜社長就任。15年7月、グループCEO社長に。</b>
1978年4月、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン日本興亜)入社。2010年7月、損保ジャパン日本興亜社長就任。15年7月、グループCEO社長に。

 「安心、安全、健康のテーマパーク」を作るというと何のことかといわれます。でも、とっぴなことではありません。保険ビジネスは、オンとオフの差が大きいものです。顧客のうち、自動車事故などで保険金を受け取るのは契約者10人のうち1人、あるいは10年に1度といったところかもしれません。それを保険契約のオンの時だとすると、残りの9割はオフです。これをまず何とかしたい。もっと顧客をサポートする時間を増やしたいと思ったのです。

 テーマパークは、アトラクションを楽しんでいるオンの時だけではなくて、様々な接客などでオフの時も来場客にいい気持ちになってもらっています。我々も保険だけでなく、顧客に「安心、安全、健康」な生活を過ごしていただくための新たなサービスを提供していく必要があると思ったわけです。

 人口減や少子高齢化の中で「安心、安全、健康」に関わるものは、日本では大事なものになっています。事故にあった後の保険だけではなく、「事故を起こさないようにするにはどうしたら」といったサービスはその一つです。

 介護は、明確に需要が拡大していく、そして求められているものです。ただ、まだビジネスモデルに業界標準がなく混沌としている。他の事業もそうですが、デジタル技術を導入して、もっと生産性や品質、安全性などを高めていけば、過当競争のビジネスから脱皮できると思います。

 ただ、こういう改革をしようとすると難しいのが組織内の調整です。SOMPOは損保、生保、介護、海外の縦割りの4事業部門が利益責任を負っています。CDOのような横割り機能が新しいことをやろうとすると反発が起きないかとよくいわれます。

 でも、私はむしろ、ぶつかり合いは必要だと思っています。4部門には事業オーナーを置いていますが、彼らは傘下のグループ企業を動かして業績を上げるのが役割です。その分、数十億円まで投資を自ら決める権限も与えています。いわば自分で動いて、どんどん事業を拡大するという遠心力を働かせようとしているのです。

 一方でCDOやCFO(最高財務責任者)など、CxOは横串で4事業に革新を起こすように促したり、財務などに規律をつけたりします。CDOならデジタル技術で全事業の効率化などを促すのです。こちらは求心力を働かせて企業を強くするわけです。大事なのは両者が私と約束したミッションを果たしているかの評価をきちんとすることです。

 その実績で報酬も決まりますが、評価をしっかりすることがこの仕組みを動かす重要な要素ですね。(談)