データを組み合わせて新サービス

 ベンチャーの技術を活用すれば、複数の事業分野をつないだ新サービスも考えられる。

 SOMPOは今春、通信会社のアクセスと共同でグループのセゾン自動車火災保険の契約者向けに「つながるボタン」という小型機器を開発した。ボタン状の機器を自動車内に置き、事故を起こした際、そのボタンを押せばSOMPOのコールセンターに連絡し、救急車の手配もしてくれる。加えて、どの道路をどのようなスピードで走り、ブレーキのかけ方はどうだったかといった運転データの記録もできる。

<b>保険加入者の健康データを取れるフィットビットの端末</b>
保険加入者の健康データを取れるフィットビットの端末

 SOMPOはこれとは別に、米健康機器開発会社、フィットビットの健康測定端末を、子会社である損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の保険契約者の一部に貸与するサービスを昨年11月から始めている。手首に巻く小型の端末で、毎日の歩数や睡眠時間、心拍数、燃焼カロリーなどが測定できる。

 つながるボタンとフィットビットを例に楢崎常務は言う。「この2つを連動させれば、契約者ごとに睡眠時間の長短や健康状態と、運転時のスピードや急ブレーキといった操作の仕方との関連性が見えてくる可能性がある。そうなれば顧客に対して前夜の睡眠状態などから運転について気をつけた方がいい点などを自動でアドバイスできるかもしれない」

 健康維持と安全運転というアドバイスをビジネスに加えるという、従来の保険事業を超えた「安心、安全、健康」に関わる新サービスの創出である。

 デジタル技術の活用は既存の損保分野の効率化でも進行中だ。2年前に始めたドローンの活用はその一つ。ドローンを飛ばして自動車事故や火災現場を撮影し、3次元ソフトで地形などを精緻に再現する。例えば、自動車の崖からの転落事故の場合、地形などからどのように落ちたのか分析することで、運転者の事故責任割合を特定していくといった活用を始めている。従来は保険調査員が手作業で行っていたため、危険な箇所では分析自体ができなかったり、長い時間がかかったりしていたのを大幅に効率化したという。

<b>災害時に被災状況などを素早く確認するためドローンを導入</b>
災害時に被災状況などを素早く確認するためドローンを導入

 海外でも今年3月に買収した米保険会社、エンデュランス・スペシャルティ・ホールディングス(現・SOMPOインターナショナル)が得意な農業保険にデジタルを組み合わせる可能性もある。同社は自然災害と収穫に関するデータを蓄積している。それを使えば、天候の予測データを基に農家に災害を減らすためのコンサルティングなどができるかもしれないからだ。海外事業はSOMPOの利益成長の柱であり、デジタル技術の強化で利益をさらに伸ばせる可能性がある。

<b>データサイエンティストの養成講座も開いている</b>
データサイエンティストの養成講座も開いている

 そして今年6月には、「エッジAIセンター」を設置し、ビッグデータの解析や、AI分析なども始めた。一般向けのデータサイエンティスト養成講座も開催し、修了者には入社を促すなど人材獲得にも力を入れ始めている。

 デジタル技術でSOMPOが事業革新を拡大していく最大の基盤はデータだろう。500万件に及ぶ過去の交通事故データを持っている上に、今後は排尿センサーなどで集めた介護関連や自動車走行、健康データなど、膨大な情報が集積される。これらをうまく生かし、今進めているデジタル化による事業創造に加え、もう一段の新サービス開発につなげたい考えだ。

 例えば介護では入居者のデータが大量に蓄積されると、「個人により適したケアプランをAIで作成できるようになると考えている」(並木・介護・ヘルスケア事業部課長)という。どういう状態の人がどのような回復訓練や介助を受けて機能改善をしたかといった蓄積データをAIがディープラーニング(深層学習)することで、精度の高いケアプランを作成できるというわけだ。

<b>デジタルシフトに備え人材の確保が急務。データサイエンティストの養成講座を今春から開催している</b>
デジタルシフトに備え人材の確保が急務。データサイエンティストの養成講座を今春から開催している

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