そこで今年4月からは、買収したメッセージを衣替えしたSOMPOケアネクストの老人ホームなどに排尿センサーと呼ぶ小型機器を導入、必要な入居者に装着し始めた。センサー部分をぼうこう付近に貼り付けて超音波で中の尿量を測定して、職員のタブレットに情報を送信する。ぼうこう内の尿量の変化がリアルタイムで分かるという仕組みだ。

 これでトイレに付き添うタイミングなどが判断しやすくなる。有料老人ホームのSOMPOケア ラヴィーレ鷺ノ宮でケアトレーナーを務める白石陽子さんは、「夜勤の職員が頻繁に見回る必要がなくなった。余裕ができた分、他の作業に回せる時間が増えて夜勤後の残業がほとんどなくなった」と話す。

 さらにSOMPOケアの施設などでは今年春から、入居者の居室や浴室にマイクロ波を使うセンサーを設置。体の動きや呼吸を検知し、動きが長時間止まると職員の携帯端末に「異常」が通知されるシステムも設けた。これもまた、必要な時にだけ職員が動けば済むようになり仕事の効率は良くなった。

<b>介護事業では国内2位に</b>
介護事業では国内2位に

 「デジタル技術で介護事業を『生産性』『安全性』『品質』『職員の負荷』の4点から変えていきたい」。SOMPOホールディングス介護・ヘルスケア事業部の並木洋平課長はこう意気込む。

自動運転時代の保険も準備

 SOMPOの事業革新の特徴は、同社が技術開発型のベンチャー企業と一体となって実行していることだ。しかも自ら国内外のベンチャー企業を発掘する。社内で「デジタルトランスフォーメーション」と呼ぶように、日米を中心とする世界のベンチャーの技術を使うことで事業を作り替えようとしているのである。

 そのために昨年4月、本社にデジタル戦略部を設け、米シリコンバレーにデジタルラボを作った。

 役割は「世界から有望なベンチャー企業を探し、使えるとみたものを導入すること」。グループCDO(最高デジタル責任者)の楢崎浩一・常務執行役員はこう言う。その楢崎常務自身も昨年5月に移籍してきた。三菱商事を経てシリコンバレーのベンチャー企業で長年働いた経験があり、デジタル戦略の責任者としてスカウトされた。

 現在、楢崎常務が率いるデジタル部隊が力を入れているのが、起業家とベンチャーキャピタル、起業家を支援するインキュベーター、学者・技術者など、ベンチャーを取り巻くネットワークに入っていくことだ。投資家や支援者、起業家が密接につながり、影響し合う「エコシステム(生態系)」と呼ばれる起業家のネットワークに入り込んで新技術・新ビジネスにいち早く接近しようというのである。

INTERVIEW
楢崎浩一グループCDOに聞くデジタル戦略
デザイン思考で事業を革新する
デジタルを活用したSOMPOの将来像

有望なベンチャー企業を世界で発掘する。あるいは一緒になって開発する


そのデジタル技術を使って、損保、生保、介護、海外の主要4事業を作り替える


既存の事業の枠にとらわれない。安心・安全に関わるサービスを開発していく


現場でまだ意識されていない真のニーズを捉えて、新たな改革を仕掛ける

問 どのような戦略でデジタル技術の活用を進めていく考えですか。

答 米国と日本を中心に有望なスタートアップを発掘し、その技術を生かして保険や介護事業を作り替えるというのが基本です。ただし、通り一遍の発掘ではだめ。シリコンバレーのエコシステム(生態系)の中に深く入り込んで、起業家やベンチャーキャピタル、インキュベーター、学者などの人脈と一体になるくらいでないと有望な技術は見つかりません。

問 どうすれば入り込めるのですか。

答 どこに行っても、起業家らしい人と会ったらすぐに声をかけて、接点を増やすことが欠かせません。「『今なにをやってるんだ』と話しかけて、どんどん関係を作れ」と当社のシリコンバレーラボのスタッフには言っています。そうやってチャンスの端っこを常に探して、少しでも可能性があると思ったらどんどん関係を作っていくのです。

問 シリコンバレーの創業間もないスタートアップから損保へ転身をしました。

答 スタートアップ企業で働くのは面白かったし、自分に合っていました。そこへ話があったのですが、CDOでしかも損保というので、最初は難しいのではと思いました。でも、桜田謙悟・グループCEO社長や西澤敬二・損害保険ジャパン日本興亜社長に会って驚きました。そこまで深く(事業革新の必要性を)考えているのかと。西澤社長は、保険市場の成熟化などに強い危機感を持っていました。そして桜田グループCEO社長は、「保険は伝統的な仕組みの事業だが、5年後10年後には今のビジネスモデルは大きく変わっているかもしれない」と言われたのです。

問 「安心、安全、健康のテーマパーク」を目指しています。次に求められるものをどうつかむのですか。

答 「デザインシンキング」とよくいわれます。例えば顧客はどんな時に安心感を得るのか。なぜ安全運転ができないのか。抽象的なイメージを考える。一方でいい技術が見つかったら、そこからさらに深める。これが本当は必要なのではと。そして、それを実証して使えるものを選び出していく。従来型の目に見える市場を分析するマーケティングではもう通用しません。