当初と比べ、コストと時間は10分の1になり、2020年までに全国の高速道路の高精度地図を完成させるめどが立った。髙山善司社長は「高速道路の地図製作は、自動車メーカーへの提供だけで利益が出る水準に持ってくることができた」と言う。

 ゼンリンは、内閣府が進める「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・自動走行システム」の高精度地図の調査・検討業務も、三菱電機など6社と共同で2015年9月に受託。地図の規格や各地図会社間のデータ連携方法などを検討している。

 今や「自動運転銘柄」として市場からも注目を集め、株価が2011年年初から約3倍に上昇したゼンリンも、もともとはアナログな会社だ。創業は1948年。大分県の別府温泉で、観光案内用「温泉マップ」を手掛けたのが始まりだ。温泉宿の名称まで掲載された地図が大ヒットし、創業者の大迫正冨氏が「一軒一軒の情報を掲載した地図」の製作がビジネスになると思い付いた。それが現在、同社が圧倒的なシェアを誇る「住宅地図」につながっていく。

 82年には、他社に先駆けてデジタル地図の作製に着手。90年にカーナビゲーション用地図を発売して国内シェアトップを勝ち取り、その後、グーグルや米マイクロソフトなどにもデジタル地図の提供を始めた。スマートフォンやパソコンで見られる日本の地図の多くが、ゼンリンによるものだ。

 2016年3月期の業績は売上高549億円で、営業利益は30億円。売上高のうち、従来の地図帳の販売は17%で、残りをほぼデジタル地図の販売が占める。出版事業やカーナビ事業は漸減傾向にあるが、地理情報システムの販売が好調で、増収増益を達成した。

カーナビやスマホ向け地図が主力
●ゼンリンの売上高と事業別割合
カーナビやスマホ向け地図が主力<br/> ●ゼンリンの売上高と事業別割合
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1000人が全国を歩き回る

 その強みは、人海戦術による調査にある。5月下旬、早くも夏日となったこの日の午後、横浜市港北区の住宅地を調査員が歩いていた。手元には画板と色とりどりのボールペン、足元はスニーカー。タオルとペットボトル、塩あめをかばんに入れ、1日に最大で6時間半、住宅地を歩き回る。番地や表札、建物名などを細かくチェックし、すぐに隣の住宅へ。道路の形状なども確認しながら、足早に進んでいく。

1.全国の住宅の表札や番地などをくまなくチェックするゼンリンの調査員 2.簡易計測車両を使って道路標識なども住宅地図に加える
1.全国の住宅の表札や番地などをくまなくチェックするゼンリンの調査員 2.簡易計測車両を使って道路標識なども住宅地図に加える
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3.調査員による修正箇所をデータとして打ち込む。北九州の本社が担当 4.米グーグルの「グーグルマップ」ではゼンリンの地図が使われている(画面下に「ZENRIN」の文字)。他にも、米ヤフーや米マイクロソフトにも地図を提供している
3.調査員による修正箇所をデータとして打ち込む。北九州の本社が担当 4.米グーグルの「グーグルマップ」ではゼンリンの地図が使われている(画面下に「ZENRIN」の文字)。他にも、米ヤフーや米マイクロソフトにも地図を提供している
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