むしろ問題となったのはディープラーニングを何に生かすか。インターネット向けのサービスには、早晩、米グーグルや米フェイスブックが参入し、莫大な資金力で世界をのみ込むことになる。家庭向けのサービスも米アマゾン・ドット・コムの牙城だ。製造業は性能・品質要件が厳しく、スタートアップが創業直後に参入するには壁が高い。

 世の中を一変させるディープラーニングを、自分なりにビジネスとして成立させるにはどうすればいいのか──。考え抜いたあげく、岡田社長がたどり着いたのが小売業だった。

 小売業界では、ネット通販の急速な台頭を受け既存店が停滞。その一因は個人情報をあらかじめ登録したうえで買い物するネット通販と異なり、現実世界の小売店にとっては、何の通告もなく店舗を訪れる顧客が「のっぺらぼう」のような存在であることだった。どんな顧客がどのように店舗内を歩き回っているかというデータにニーズがあるのは明らか。また、何か手を打てば顧客の反応が即座に返ってくるという業界の特徴も魅力的だった。ディープラーニングを活用することで業務改善の効果が分かりやすく表れるからだ。

存在感が急速に高まっている
ABEJAの累計納入実績 存在感が急速に高まっている

 狙いは的中した。これまでに三越伊勢丹ホールディングスなど大手が導入。汎用型サービスとして設計したことで利用料も月8000円からに抑えられ、結果、中小・零細店舗への売り込みにも成功する。提供開始から2年弱ながら、納入実績は小売り向けで約70社、店舗数で約300拠点にのぼる。