しかし、オフィス賃貸事業の8割近くの利益を丸の内地区で稼ぐ経営構造は一本足打法に近い。しかも以前から丸の内地区などに自社保有するビルを取り壊して再開発するため、工事期間中は賃料収入が無くなるという弱点がある。地権者の土地所有権などを活用した再開発で、運営するビル数を新たに拡大する競合他社には利益水準で劣りがちだ。

ビル事業以外の成長が課題
●三菱地所の部門別利益
注:連結営業利益(1661億円)は、部門別利益の合計から全社・消去の149億円がマイナスされる

アウトレット事業に伸びしろ

 三菱地所の今期(2017年3月期)の連結純利益は前期比3%増の860億円と過去3番目の高水準を見込むが、同業に目を向けると共に今期最高益見込みの三井不動産(1250億円)と住友不動産(970億円)に後れを取る。

 利益3番手から抜け出すには、国内ビル事業以外での成長が不可欠と見る。杉山社長も「フィー(手数料)ビジネスなど、賃料以外の収入源を増やしたい」と話す。三井不動産のように、商業施設運営や不動産仲介など多様な収入源を持つバランス経営を追い求める。景気変動に市況が影響されるビル賃貸事業に比べ収益に安定性をもたらすメリットもある。その中で三菱地所が期待を寄せるのが、アウトレット施設などを運営する生活産業不動産事業だ。

 5月上旬、三菱地所が手掛ける御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県御殿場市)を訪れると、狩野保支配人は真っ黒に日焼けした顔で「ここ数週間まったく休む暇が無い。新興国の景気減速はあまり影響が無いみたいです」とほほえんだ。

 ゴールデンウイークが終わった後にもかかわらず、全国9カ所にあるプレミアム・アウトレットの中で最大の集客数を誇る御殿場プレミアム・アウトレットが盛況なのは、訪日外国人によるところが大きい。

 この日もタイや中国からの観光客がひっきりなしに大型バスから降りてきた。施設を見下ろすようにそびえ立つ富士山をカメラに収めようと、撮影スポットは人の山。こうした訪日外国人が施設内で洋服や靴、おもちゃなどを買い求める。イスラム教徒に配慮し祈りのためのスペースを設けたり、10種類近い通貨に対応した両替機を設置したりしている。2015年4~12月の外国人客数は前年同期比8割増の117万人になるなど、伸びしろは大きい。

 脱・国内ビル事業依存のための方策は海外にも向く。古くから参入しているロンドンやニューヨークなどは「もはやローカルプレーヤーの一員」(杉山社長)。今後成長を期待するのがアジア地域だ。シンガポールでは現地の不動産会社キャピタランドと組み、地上40階建てビルを総事業費約1200億円で昨年の末に完成させた。

育つか、非ビル賃貸事業

 さらにもう一つ、利益底上げへ期待するのは不動産ファンド運用による手数料ビジネスだ。同社は上場REIT(不動産投資信託)や私募ファンドなどを通じ、国内外で3兆2000億円規模を投資するが、2020年までに5兆円に引き上げる計画だ。2014年には米国の不動産ファンド運営会社、TAリアルティを買収するなどM&A(合併・買収)を通じた規模拡大を目指して動いている。

 ビル事業では創業からの丸の内への一点集中を貫きつつ、アウトレットやファンド運営で利益の底上げを狙う。丸の内の大家ではなく、「多角経営の大家」に三菱地所は変貌するための種をまいている。東京に巨大摩天楼が建つ2027年頃、種は根を張り、空高く伸びているだろうか。