強まる丸の内包囲網

 ひとまず現在の東京の不動産事情をおさらいしてみよう。

 2020年の東京五輪に向け、容積率などの規制を緩和する国家戦略特区が定められ、都心のあちらこちらで高層ビル建築が進んでいる。空を飛ぶ鳥もさぞかし驚く光景だ。

 例えば森ビル。今年4月、虎ノ門ヒルズの周辺に4000億円を投じてオフィスビルと住宅棟の計3棟を建設する計画を発表した。羽田空港直通のバスターミナルを併設するなど、得意の外資系企業の取り込みに備える。辻慎吾社長は記者会見で「国際新都心を虎ノ門に作る」と、丸の内地区を意識したかのような発言をした。

 2016年3月期の連結売上高が1兆5679億円と不動産業界国内トップの三井不動産は、日本橋での再開発を拡大するほか、東京駅を挟んで丸の内地区の反対側に位置する八重洲地区の再開発を進める予定。住友不動産もビル開発ペースを従来の2倍に引き上げた。六本木や品川周辺など東京都内を中心に、2021年度までに30棟のオフィスビルを開発する。

 大規模再開発に乗り出すのはデベロッパーだけではない。東日本旅客鉄道(JR東日本)や京浜急行電鉄などが2027年のリニア中央新幹線開業に向けて品川駅周辺の整備に動き出している。開発次第では、品川駅が東京駅からターミナル駅の立場をも奪いかねない勢いだ。

 「丸の内の大家」という異名を持つ三菱地所も安穏とはしていられない。「東京の中心」という地位を守るためにも丸の内の再開発を急ぐ必要があった。問題はテナントを大量に誘致する魅力を持たせられるかだ。

 解の一つは「エリアマネジメント」である。

 三菱地所は丸の内地区に30棟のビルを所有しており、統一感のある街づくりが可能。新しいビルをただ無機質に並べる「点の開発」ではなく、「面の開発」ができる。その優位性を生かし、これまでビジネスパーソンが中心だった丸の内に、新しい人の流れを作り出そうとしている。

 にぎわいを生み出すメーンステージとなるのが、丸の内から有楽町に抜ける仲通りだ。かつては銀行の窓口が並び、ネクタイ姿のサラリーマンで平日はあふれていた。その半面、土日になると人影はまばら。隣にある銀座にしか誰も見向きもしなくなる地域だった。

丸ビル開業以降、再開発が加速する
●三菱地所の丸の内地域の開発状況
注:円の大きさは延べ床面積の大きさを表す(写真=左下:清水 真帆呂)