現地採用の人材を日本で育成

 海外の現場を管理する人材は必ずしも日本人である必要はない。現地採用した社員の育成にも注力する。海外事業拡大には優秀な現地の人材は欠かせないが、ただ採用するだけでなく「清水建設のDNA」をどう植え付けるかが課題。そこで力を入れているのが現地採用の人材を日本に長期滞在させ、日本の社員と働きながら、清水建設のノウハウを学んでもらう取り組みだ。

 マレーシアで工事現場の地質調査スタッフとして採用されたアドザム・アズマンさん(30)は現在、東京本社の土木技術本部で働いている。清水建設流の仕事の進め方や最新技術を学ぶ毎日だ。アズマンさんは「学んだ技術を、母国のようなインフラが未整備な国へ持っていきたい」と語る。10月には総合職への昇格面接を控える。将来は世界各国のプロジェクトで活躍してもらう予定だ。

 この研修の目的は外国人社員に清水建設のやり方を教えるだけではない。もう一つの狙いは「国内を国際化することだ」と北常務は説明する。日本人だけのモノカルチャーの職場に外国人を加え、複数の国籍が交ざった環境での仕事のやり方を学ばせる。「海外の取引先はもちろんだが、国内の顧客企業もグローバル展開しているのだから、日本の社員でも海外を向く姿勢がないといけない」(北常務)

2期連続で最高益
●清水建設の売上高と純損益

 売上高はバブル期の1990年代には及ばないものの、2017年3月期の連結純利益は989億円と2期連続で最高益を更新した清水建設。東京都心部の再開発、20年に控えた東京五輪・パラリンピックに向けた建設需要など、日本国内の建設市場は、最盛期を迎えている。好業績に沸く中、海外人材の育成を急ぐのは、人口減などで国内需要のピークアウトが見込まれるからだ。国内建設が中核事業であることは変わらないものの、新たな成長領域を拡大していかねばならない。不動産の投資開発事業や電力小売りなどのエネルギーマネジメント事業と並んで海外での建設事業を成長の柱にしていく考えだ。

 むろんこれまでも海外は強化してきたが、17年3月期の海外売上高比率は6%にとどまる。国内のライバルである鹿島の22%、大林組の24%などと比較しても低いのが実態だ。国内のオフィスビル建設を強みとしてきたが、海外での出遅れを取り戻すことが喫緊の課題になっている。

 アジア開発銀行(ADB)の報告書によると、30年までにアジアでは年間1兆5000億ドルものインフラ整備需要があるといわれている。清水建設もアジア市場を中心に受注を獲得し、海外の建設事業に占めるインフラの比率を「直近の15%から5年で25%程度にまで引き上げたい」(井上社長)考えだ。

中韓に押される日本のゼネコン

 しかし、事業拡大はそう簡単な話ではない。中国・韓国勢が勢力を伸ばしている。日本のゼネコンは品質の高さを売り物にしてきたが、今やアジアで獲得できる大型プロジェクトは、日本政府によるODA(政府開発援助)の案件が中心だ。それ以外の主要案件はコスト競争力を武器にする中韓勢がさらっていく。それが実態だ。

 世界の建設会社ランキングからも競争の激化は明らか。04年の売上高で世界の上位10社に入っていた日本の大手4社は、15年に軒並みランクを落とした。日本勢トップは15位の大林組で清水建設は21位。このままでは台頭する中韓の建設会社にアジアの受注を奪われる。現状を覆すには、国内で培った建築ノウハウを土台にしつつも、海外でプロジェクトを管理できる人材を充実させ、競争力を高めることが欠かせない。

 清水建設で20代の若手を海外に送り込むようになってはっきりしたことは「海外を経験した若手は明らかに成長が速い」(北常務)ことだ。海外は国内に比べ大規模プロジェクトが多い。若手社員の下にも現地の作業員がつくことから、部下を管理したり指導したりする経験を積める。

 内需企業の代表格だった建設業界にもはや過去の成功体験は通用しない。世界で戦える人材を創る。そして、ODA以外の案件が任される真のグローバル企業へと脱皮するには、若手の力が必要になっている。

この10年で中韓勢が台頭
●世界の建設会社の売上高ランキング
注:11位以下は主に中国、韓国の企業を抜粋 出所:みずほ銀行産業調査部資料より作成

(浅松 和海)