明治製菓と明治乳業の統合で誕生した1兆円企業、明治ホールディングス。当初は相乗効果が薄いとみられていたが、過去4年で時価総額は6倍以上に急拡大した。不採算商品を思い切って削るだけでなく、ヒット商品も生み始めた。統合により何が変わったのか。
日経ビジネス2017年7月24日号より転載


8度目の正直──。1986年以来、高級チョコレートの開発に何度も取り組んできた明治が、ついに鉱脈を掘り当てた。2016年9月に改良発売した「明治ザ・チョコレート」が大ヒットしている。
明治はチョコレート市場でシェア首位だが、従来の主力品「ミルクチョコレート」の価格は100円前後で、価格競争は激しい。そこに投入したザ・チョコレートは2倍以上の税抜き220~230円という思い切った値付けにした。当初、取引小売業からは「その価格では売れない」といった声も上がったが、ふたを開けてみれば、発売から半年間で1年間の目標を超える約44億円を販売した。
このザ・チョコレートはもともと14年に売り出したが、リニューアルするまでは、過去の高級品と同じように不発だった。その反省を踏まえて、香料や砂糖の使用を抑えて、カカオの味わいがはっきりと分かるようにした。1枚のチョコレートにさまざまな模様をつけるという手の込みよう。商品開発のチームは、「生産効率が落ちる」という生産部門からの懸念を押し切った。
商品改良で最もインパクトが大きかったのは斬新なパッケージデザインだ。「こんな形では小売りの棚に入らない」。抵抗したのは営業部門だ。板チョコは横型という常識を覆して縦型にしたからだ。薄茶色の素朴な下地にカラフルなカカオの絵が浮き上がるイメージ。開発チームは「チョコレート専門店のような高級な雰囲気を演出したい」と訴えて、社内を説得した。
統合なければヒット実現せず
このザ・チョコレートのヒットは明治製菓と明治乳業の経営統合を抜きには語れない。まずは両社で膨れ上がっていた不採算の商品を、統合をテコにして徹底して廃止した。だからこそザ・チョコレートのような重点商品に集中して力を注ぎ込むことができる。「あれもこれも」と全方位で弾を打ち続ける悪習をやめたからこそ生まれたヒット商品といえる。
ザ・チョコレートの開発はマーケティングの人員も部門横断で参加する3人の専従部隊が担った。人的資源も集中投入する戦略で、明治にはあまりなかった組織の形だ。「チョコレートはこうあるべきだという、メーカーの古くからの思い込みから脱却できた」(菓子マーケティング部マーケティングG専任課長の佐藤政宏氏)のは、組織のしがらみから離れた成果ともいえる。
チョコレート以上に価格競争が激しいといわれるのがヨーグルト市場だ。小売業のプライベートブランド(PB=自主企画)の存在感も高い。ここでも明治は高収益の重点商品がある。高機能ヨーグルトとしてヒットした「R-1」だ。免疫力の向上が期待できるとされる。価格は1個120円程度。PBと比べれば倍以上の価格で、発売から7年たっても、値崩れしていない異例の商品だ。
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