改革4 ブランド

それでも「顔」はMC

 そして、4つ目の改革が、ジャパネットの「顔」であった「MC=高田明」が去った穴を埋めることだ。サービスの「顔」がいなくなるということは、すなわち、ブランドが弱体化することに等しい。そこで旭人氏は、「1人のカリスマ」より、「多様な個性」で新たなブランドイメージを作ろうとしている。

親子2代にわたり商売の鉄則は受け継がれる
●ジャパネットの事業戦略のポイント

 15年1月に明氏が旭人氏に社長を譲った時、最大の経営リスクとささやかれたのが明氏のMCからの引退だった。明氏は16年1月まではテレビに出演し続けたが、消費者にとってその印象は今も強烈だ。

 同社では5月下旬から6月上旬にかけ、MCを大幅に増員すべく採用活動を実施した。明氏の薫陶を受けてきた現在13人のMCに新戦力を加え、一気に20人以上に増やす計画だ。田中久美・採用戦略課リーダーは「多様性を持たせ、ジャパネットをけん引していく人材を育てたい」と語る。

 明氏は、「MCの質が低くなり消費者に信頼されなくなったら、5年後10年後に経営リスクが顕在化する可能性はある」と警鐘を鳴らす。その言葉は、ジャパネットというテレビを軸とした通販会社だけに当てはまるものではない。カリスマからの事業継承は、多くの経営者が抱えるリスクであり、「MC」を「ブランド」に読み替えれば、どんな企業にも当てはまる問題にもなる。ジャパネット2代目、旭人氏が挑む改革には、普遍性がある。

INTERVIEW
高田明創業者に聞く
事業継承は大それたものではない
たかた・あきら 1948年生まれ。今年4月にサッカーJ2のV・ファーレン長崎の社長に就任。経営の立て直しを担う。(写真=諸石 信)

 旭人社長のこの2年半については、私は高い評価をしています。それは、人を大事にする、お客様目線でビジネスを展開する、モノの先にある幸せを作り出すことをよく理解しているリーダーだと思うからです。

 事業継承という観点ではずっと言ってきたことですが、息子だからということは全く考えませんでした。ジャパネットという会社を一番理解していて、リーダーとしてふさわしいと考えた人がたまたま旭人社長だった。それは正しかったと思います。

 経営者はどこかで事業を次の人間にバトンタッチしなければならない。私自身、70歳が見えてきた頃に、売上高が600億円近くも下がる局面を迎えました。チャレンジの中で、旭人社長を中心に若い人たちの力を目の当たりにしました。

 当時私は目標を達成できなければ社長を退くと公言していましたが、実際に目標を達成できたから、逆に辞めてもいいと。事業継承にはタイミングがあると思います。もしあの時に判断してなかったら、75歳まで社長を続けていたかもしれないですね。

 社長を退いてからは、経営には一切タッチしていません。アドバイスを求められれば協力しますが、完全に任せたのだから基本は関わらない。だから、福岡の店舗についても相談は受けていないし、東京の新オフィスに夫婦で行ったら、鍵がなくて入れないこともありましたよ(笑)。

 皆さんから執着がないといわれますが、私自身は一代で大きな会社を作ったという意識が全くない。本当のところ、心の中では「カメラのたかた」の店を譲ったような感覚です。実は事業継承の覚悟って、そんな大それたものではないんですよ。

 旭人社長を中心にジャパネットは今後も環境変化に対応していくでしょう。ただ、MCに関してだけは厳しくみています。ジャパネットの中でテレビという販路は最優先的に重要で、MCはそれだけの使命感を持たねばならないからです。

 消費者の方々にメッセージを届けていく上で、満足していい段階はない。5年後か10年後に、もしお客様に飽きられ、信頼されなくなったら、そこで本当の経営リスクが浮かび上がってくる可能性がある。

 逆に言えば、旭人社長が作り上げようとしている販売からアフターケアまでの一貫体制に一流の語り手が加わることは非常に重要。そうすれば、100年続く企業が生まれると思います。(談)