テレビ通販で知られるジャパネットホールディングスが、高田明創業者の引退後も高成長を続けている。カリスマ不在という経営リスクを、組織力で乗り越えようとするのは、社長を継いだ長男の旭人氏だ。販路・商品のテコ入れを軸に創業者依存の風土を一変。競争の激しい通販業界で勝ち残りを目指す。
(日経ビジネス日経ビジネス2017年6月26日号より転載)
①
![]() (写真=諸石 信)
|
|
②
![]() (写真=菅 敏一)
|
③
![]() |
6月上旬、長崎県佐世保市にあるテレビスタジオでは、法被姿の男女がシャープ製のエアコンを前に、満面の笑みで掛け合いを見せていた。「今年発売の新製品ですよ!」「電気代も安い!」「取り付け工事費込みで!」「5万9800円でお求めいただけます!!」──。通信販売大手ジャパネットホールディングス(HD、長崎県佐世保市)の中核事業会社、ジャパネットたかた(同)のテレビ通販の語り手(MC)だ。

「ジャパネットたかた」と聞けば、誰もがあの人を思い浮かべるだろう。少し高めの声と、丁寧でユニークなMCで知られる高田明氏である。
1986年に前身となるカメラ店「たかた」を創業。ラジオ通販を皮切りにテレビ通販にも進出。一代で連結売上高1500億円を超える大企業に育て上げた。しかし現在、高田氏はおなじみの通販番組には一切出演していない。
「日本一有名な社長」ともいわれた高田氏が、社長の座を長男の旭人氏に譲ったのは2015年1月。当初、その世代交代は「経営リスク」とささやかれた。ジャパネットの通販事業は明氏のカリスマ性によって支えられてきたのに、会長職などにとどまらず完全に経営から退いたからだ。しかも、当時の事業環境は楽観できるものではなかった。
家電エコポイント制度の終了で薄型テレビの特需が消えた11〜12年、同社は2年間でそれまでの売上高の3割超に相当する、約590億円を失う危機に見舞われた。明氏は「最高益を更新しなければ社長を辞める」と宣言。デジタル家電に頼る商品構成を見直し、持ち前の販売トークで布団専用掃除機「レイコップ」などをヒット商品に育て上げ、2年間でV字回復を果たした。
ただ、この復活劇には副作用があった。公約通りの最高益達成は、明氏の経営手腕とカリスマ性に依存する同社の体質を改めて浮き彫りにしたからだ。こうした中での旭人氏への世襲。しかも、アマゾンジャパンなどネット通販が急拡大し、ジャパネットの将来が不安視されても無理はなかった。
Powered by リゾーム?