自販機のインバウンド対応

 例えば、今年4月にはインバウンド(訪日外国人)に対応し、中国語・韓国語・英語で「接客」する自販機を導入した。各国の言語で「いらっしゃいませ」などの音声で案内するほか、商品紹介のステッカーなども多言語対応。訪日客の多い大阪市の繁華街などでは「飛ぶように売れる日もある」(同社)。

 関西の一部エリアでは自販機にレンタル傘を設置し、雨の日に使ってもらうサービスも開始。冒頭の本谷さんが発案者だ。「『大阪で置き傘なんて』という意見もあったが、反響は大きかった。自分のアイデアが実現されるなんて思ってもみなかった」と笑う。

 こうした自由な発想が現場から生まれる環境づくりは、髙松社長が5年前から仕掛けてきた。当初は有志を中心としたワークショップからスタートし、2年前に若手やオペレーターの意見を採用し、ビジネス化するための専門組織として発足。現在は様々なアイデアを具現化している段階だ。

 商品面でもこうした風土改革は進む。今年2月に発売した「ダイドーブレンド うまみブレンド」は20~30代の社員が中心となり開発した。コーヒーの果肉を原料にしてほのかな甘みを持たせたほか、パッケージには赤く熟した果実のデザインを採用した。

 開発に携わったマーケティング部の藤村二歌さんは「果肉を使うのは前例がなく苦労したが、重要な役割を任されたことで消費者の嗜好など多くを学ぶことができた」と振り返る。

 発想力を育てる一方、収益力を高める施策にも注力。自販機は調達方法を見直すほか耐用年数を伸ばすための改良などをメーカーと進め、2020年度には固定費を現在より年間50億円減らせる体制にする。安定した販売が期待できるオフィス・工場など向けの営業も強化し、その割合を現在の約3割から2018年度に5割まで高める。

 自販機ビジネスの競争力を磨き、国内市場で独自のポジションをつかみ直す。その先にダイドーが目指すのが、海外事業をはじめとする新しい領域にノウハウを応用し、新たな収益源として育成する道だ。

海外に自販機モデルを移植

 2013年にはロシアに進出し、モスクワの空港やバスターミナルなどで約500台の自販機を展開する。年々設置台数を増やし、都心部を中心に浸透させる計画。いずれはロシアをハブにCIS(独立国家共同体)地域でのビジネスも視野に入れる。

 アジア・中東にもくさびを打ち込んでいる。2015年にマレーシアの食品大手、マミー・ダブルデッガーの飲料事業部門に資本参加。今年2月にはトルコ食品最大手のユルドゥズ・ホールディングから飲料製造子会社3社を約133億円で買収した。新興市場で攻めに出る姿勢を打ち出した格好だ。

 両国では当面既存の小売店向けの製造販売を伸ばしつつ、ここでも「中長期的には自販機事業を手掛けていきたい」と髙松社長は意気込む。日本のように全国津々浦々に自販機を設置するのは難しくとも、「都心部などでドミナントエリアを形成し、それを効率的に回す日本のモデルは通用する」との思いがあるためだ。

 逆風下で21世紀型の自販機の「勝ちパターン」を探そうとするダイドー。業界の競争が激しさを増すなか、生き残りに向けた模索は続く。