成功体験が改革を阻む

 ダイドーで自販機営業本部副本部長を務める笠井勝司・執行役員は、「『自販機は小売店』という信念が40年以上にわたる自販機ビジネスを支えてきた。今こそ培ったノウハウを進化させなければならない」と強調する。先頭に立つのが2014年に父の髙松富博会長からトップの座を継いだ髙松富也社長だ。

 髙松社長は2001年に大学卒業後、三洋電機勤務を経て2004年にダイドーに入社。その時点で、既に競合メーカーは小売りチェーンへの営業を強化しつつ、自販機のオペレーション部門を分社化するなど環境変化への対応を進めていた。しかし、ダイドーは「自分たちのモデルは素晴らしく、もうかっているとの思いが強かった」(髙松社長)。成功体験が改革を阻んでいた。

 こうした状況に危機感を募らせた髙松社長は、2010年頃から担当役員として構造改革に着手。社内の抵抗を押し切る形で自販機のオペレーション部門を分社化し、賃金体系も見直した。コスト構造にメスを入れる一方で取り組んできたのが新しい成長源となるビジネスモデルの模索だ。

 「スマートフォン(スマホ)と通信する自動販売機」──。ダイドーは今年4月、「Smile STAND」と銘打った新サービスを開始した。

 スマホに専用アプリをダウンロードした利用客が、自販機で商品を購入した後に付属のパネルにスマホをかざすと1円につき1ポイントがたまる。ためたポイントは、スマホで懸賞ゲームを楽しむ際に使える。スマホ画面でスロットを回すと、最新家電製品やクルージングが当たる仕掛けだ。

[1]4月に始めた「Smile STAND」では、スマートフォンをかざすことでスロットなどに使えるポイントがたまる[2]インバウンド対応で、中国語や韓国語に対応した音声案内や表示を充実させる[3][4]海外市場ではロシアでの自販機事業のほか、マレーシアやトルコにM&Aで参入([1][2]写真=太田 未来子)

 同サービスは当面、東京・大阪など大都市中心に約5万台で運用、2018年度までに約15万台に広げる。子供が遊べるコンテンツを充実させるため、クックパッド傘下で子供向けの職業体験アプリを手掛けるキッズスター(東京都世田谷区)などと連携する。

 一見、単純な販促策と映るかもしれない。だが、ダイドーが見据えるのはその先。自販機のIoT(モノのインターネット化)により、飲料を販売する以上の付加価値を提供するプラットフォームの構築である。

 同社は2018年度に売上高2000億円、営業利益率4%の中期経営計画を掲げており、自販機のIoTは目玉の一つ。自販機戦略グループの西佑介リーダーは「売れ筋の傾向分析や数量管理にとどまらず、広告や地域情報の配信、見守りサービスなどのアイデアも議論してきた」と語る。2017年以降に新サービスを積極投入していく計画だ。

 IoTに限らず、自販機の魅力を高めるために様々な工夫を凝らす。