セメダインが出資、共同事業も

「分散型エレクトロニクスが今後の主流になる」と強調する清水信哉社長(写真=的野 弘路)
「分散型エレクトロニクスが今後の主流になる」と強調する清水信哉社長(写真=的野 弘路)

 清水社長が感じた将来性は3点ある。1つ目は大型化に対応できる点。従来のプリント基板は生産設備の制約から大型化が難しかったが、回路を直接印刷する手法を実用化できれば、サイズの制約はなくなる。実際、エージックは今年までに、幅130cmで、どこまでも長くできる印刷設備を完成させた。改良を重ねれば、建物の壁一面を電子看板に変えることもできる。

 2点目がどんなモノにも回路を作製できる点だ。回路に加工を施すことで、「少なくとも10年程度の耐久性はある」(清水社長)。ドローンの機体に直接回路を印刷すれば、軽量化で飛行距離を伸ばせるようになる。

 3つ目がオンデマンド生産に対応できる点。従来のプリント基板は生産に時間とコストがかかったが、回路を印刷すればこれらを大幅に圧縮できる。急な少量の発注にも対応が可能だ。

 エージックは通電性インクの生産だけでなく、インクの性能を最大限に引き出すフィルム、プリンターも同時に開発。競合他社が模倣しづらい仕組みを作り上げることに成功した。

 小学校の理科教材に使われるなど実績は少しずつ増えているが、採用はまだ一部にとどまっている。2015年12月期の売上高は約4000万円。「全く新しい技術なので顧客企業も使い方が分からない。一緒に革新的な用途を見つけ出していくしかない」と清水社長は語る。杉本取締役が仕掛ける竹尾との共同事業も、デザインという切り口から新たな用途開発を狙っている。

 将来の有望株として長い目で評価している企業もある。エージックが今年2月に実施した総額1億7500万円の第三者割当増資。その一部を引き受けたのがセメダインだった。

“有望株”として資金が集まる
●主な資金調達額と調達時期
“有望株”として資金が集まる<br />●主な資金調達額と調達時期

 セメダインは電気を通す接着剤を開発。エージックと組めば、LED(発光ダイオード)などの電子部品を紙やフィルムに貼り付けるといった用途開発が進むと考え、今回の出資を決めた。

 エージックにとって資金調達は研究開発や設備投資の原資を確保するだけでなく、用途開発に向けた“仲間づくり”の意味合いが大きい。水面下で進む様々な共同事業の成果が回路のように結びついた時、プリンテッドエレクトロニクスは大きく飛躍するだろう。

(日経ビジネス2016年7月4日号より転載)

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