(日経ビジネス2017年7月10日号より転載)

7月の改装オープンに向け、現在工事真っ最中の「富士マリオット・ホテル山中湖」(山梨県山中湖村、旧名称「リゾートホテルラフォーレ山中湖」)の客室には、アステック製の浴槽が次々と運び込まれている。内側に十和田石を張り、浴槽の縁部分のかまちにヒノキを使った和風の浴槽だ。

同ホテルを運営する森トラストは昨年2月、訪日外国人の地方リゾートへの回遊を促すため、米マリオット・インターナショナルとフランチャイズ契約を結んだ。山中湖のほか今年相次ぎ改装する南紀白浜(和歌山県白浜町)と琵琶湖(滋賀県守山市)でも、それぞれ約50室にアステックの浴槽を導入する。
ホテルの国際的ブランドと、日本ならではの温泉を客室で味わえる和風の浴室空間。外国人にとって日本観光の目的の一つは温泉だ。内山雅揮専務は「『和』を感じたいインバウンドの拡大が当社の追い風になっている」と話す。アステックの浴槽は、東京や京都などの定番観光地に飽き足らず、地方へ繰り出す外国人の取り込みに一役買う。
アステックは1988年、内山繁社長が両親の経営するバルブ製造会社から独立して創業したのが始まりだ。90年に法人を設立した。当初内山社長は、浴槽のお湯のろ過装置を製造販売していた。需要がありそうと見込んだ温泉旅館へ売り込む中で、木を使った和風の浴槽は傷みやすく、漏れたり腐ったりして旅館の負担が重いことが分かった。
そこで、内山社長は既製のステンレス製の浴槽に、十和田石などの天然石やヒノキなどの木材をあらかじめ貼り付けることを思いつき、職人に頼んで試作してもらった。
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