ビジネス書や文芸書を音声化し、耳で聴く本「オーディオブック」を手掛ける。米国での市場が成長する中、日本での需要拡大を狙う。
(日経ビジネス2017年7月3日号より転載)


「朝の満員電車の中でも本が“聴ける”」「ランニングをしながらでも使えるのはうれしい」。オトバンクが提供するオーディオブック「FeBe(フィービー)」は場所を選ばず、どこでも本が“聴ける”音声配信サービスだ。会員数は22万人、書籍コンテンツ数は2万を超える。
オーディオブックは活字の書籍を声優が朗読し、BGMや効果音を加えて音声コンテンツ化したもの。利用者はFeBeに会員登録すればスマートフォンや音楽プレーヤーに音声コンテンツをダウンロードして、本を耳で聴くことができる。1冊の値段は書籍の単行本と同水準となっている。6月末からは新しく定額制の聴き放題サービスも始めた。
2007年にサービスを開始。最初はビジネス書や自己啓発本を中心に音声化していたが、最近力を入れているのが文芸書だ。芥川賞受賞でベストセラーとなった又吉直樹の『火花』や、今夏の実写映画化が予定される住野よるの『君の膵臓をたべたい』など話題作を次々と配信している。
声優学校出身者らが製作
オーディオブックの製作には膨大な手間がかかる。まず出版社に音声化の許可をもらい、その作品に適した声優をキャスティングする。声優が声を吹き込み、製作スタッフが読み間違いなどをチェック。その後にBGMや効果音を入れて編集し、最後に出版社に内容を確認してもらう。1冊の書籍を製品化するのにかかる期間は3カ月。製作費はキャストの人数や作品の長さにより異なるが、数十万円の作品もあれば500万円以上かかる作品もある。
100ページほどの文芸書であれば音声データでおよそ2時間弱の長さになる。作品の世界観をより良いかたちで表現しつつ、長時間でもストレスなく聴ける内容にするには朗読の速さや抑揚のつけ方など、本独特の行間を表現するノウハウが必要になる。
この点、オトバンクの強みとなっているのが「専門家を社内で抱えていること」(久保田裕也社長)だ。同社の製作スタッフはほぼ全員がノウハウを熟知した声優学校の出身者だ。
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