もう一つの成長エンジン、海外事業も曲がり角に

 この20年を振り返れば、米国事業と海外事業が両輪となってウォルマートの成長をけん引してきた。事実、海外事業を統括しているウォルマート・インターナショナルは世界2位の小売業者である。だが、中国経済の減速やドル高の影響は大きく、足元の業績は停滞している。

海外事業が成長を牽引してきた
●ウォルマートの店舗数
出所:Statista

 5月28日、ウォルマートの中国法人は広東省珠海市に、同社としては中国初のコミュニティー型と言われる中規模のSC(ショッピングセンター)を開業した。核店舗として入るのは、会員制スーパーのサムズクラブだ。

 中国の経済メディアはウォルマートが中国でSCの開発、運営を手がける「不動産開発業者」になったのは大きな戦略転換だと報じている。珠海市のSCでは、テナントに占める飲食の比率を4割にまで高めたほか、フィットネスクラブやブックカフェも取り入れた。生活に密着するサービスや体験型テナントを増やし、来店を促す。

 ウォルマートはこうしたSCを今後、江西省の南昌市や広東省の恵州市などに建設する計画。「サムズクラブのフォーマットは中国向き」と国際部門のデイビッド・チーズライト社長兼CEOが語るようにサムズクラブを戦略の一つの核とする方向だ。

 こうした戦略の背景には、米国と同様、ネット通販との激しい戦いがある。

 ウォルマートは1996年に中国に進出し、昨年末の段階で25の省・自治区・直轄市の169の町に433の店舗を出している。これまで出店してきたのはウォルマートの主力業態であるスーパーセンターだ。仏カルフールなどとともに大型店で新たな消費スタイルを作り出してきた。

中国ではアリババが壁に

 だが、米国や日本と比較しても急激に発展している中国のネット通販市場が、ワンストップショッピングが強みだったスーパーセンターから顧客を奪っている。

 ウォルマートはネット通販分野の強化を狙い出資していた中国のネット通販中堅企業、「一号店」を昨年、完全子会社化した。ただ、ネット通販分野には最大手で6割超のシェアを握るアリババ集団が立ちはだかる。アリババは農村でのネット通販利用を促す戦略を加速しており、地方市場ではウォルマートとの戦いがさらに激しくなるのは間違いない。

 ウォルマートにとって中国以外のアジア事業は、日本とインドだけだ。2002年に進出した日本では、苦戦続きだったが、足元の業績は堅調に推移している。

 買収した西友の2015年12月期の既存店売上高は前の期比2.8%増と2期連続で増加した。2016年1~3月期も前年同期から4.1%増だ。消費増税後の消費者の節約志向をとらえたとみられるが、進出当初に構想していた「西友をプラットフォームにしてM&A (合併・買収)を展開する」という戦略は一向に進まない。

 南半球の人口大国であるブラジルも同様に苦戦している。1995年の進出以来、店舗網を拡大し、ブラジルで3番手の小売りチェーンになった。だが深刻な不況には抗しきれず、同国で60店の閉鎖を発表した。「昨年は本当に厳しい年だった」(国際部門CFO=最高財務責任者=、リチャード・メイフィールド氏)と打ち明ける。

 ウォルマートの世界戦略は、米国内での圧倒的なシェアと高収益を前提として進められてきた。仮に米国で「本丸」の食品を巡るアマゾンとの競争で劣勢になるようなら、アジアを含む国際戦略の大幅な見直しが不可避になるだろう。

(上海支局 小平 和良)