世界最大の小売業、米ウォルマートがリアル店舗とデジタルの融合を加速させている。商品の受け取りや決済アプリ、ネット通販システムの一新など総力を挙げて改革中だ。食品に狙いを定めたアマゾンが迫る。実店舗の巨象とネットの巨人の最終決戦の行方は?

米コロラド州コロラドスプリングスに住むマーシャ・ソース氏。保険代理店に勤める彼女は、週3回は近所のウォルマートを使うヘビーユーザーだが、そんな彼女にも不満はあった。
店舗があまりに巨大なためお目当ての商品を探し回るのに一苦労。在庫切れで商品が買えないこともあった。だが、最近は同社が始めた新サービスのおかげで買い物のストレスが軽減したという。店内ピックアップサービスだ。
パソコンやスマートフォンで商品を注文後、店舗の準備ができ次第、メールで通知が届き、店舗に商品を取りに行く。商品は既に包装されているので、専用カウンターでの支払い以外ほとんど時間がかからない。商品の保管は7日間。買い物時間の節約になっている。
加えて、同社のモバイルアプリ「セービングキャッチャー」も大のお気に入りだ。これは価格比較アプリで、レシートのQRコードを読み取ると周辺の競合他社と価格を比較、他社よりも高ければ差額をクーポンで戻すというものだ。「これまでに40ドル以上が戻ってきた。旦那のレシートももらって、バンバンスキャンしているわ」。
ウォルマート・ストアーズ。2016年1月期の売上高は4821億3000万ドル(51兆1057億円)で、日本の税収に迫る勢い。売上高では世界最大の企業でもある。純利益も146億9400万ドル(1兆5575億円)、従業員は世界で230万人と桁違いの規模を誇る。
そのウォルマートがここ数年、強力に推し進めているのが、「シームレスショッピング」である。シームレスショッピングとは、店舗やネットの垣根をなくし、消費者がストレスを感じることなく買い物ができる環境を提供するというコンセプトのことだ。
「我々が目指しているのは、店舗もネットもなく『ウォルマートで買い物をする』ということだけを消費者が考えればいい状態を作ること」と、同社のダグ・マクミロンCEO(最高経営責任者)は語る。その実現のために、ウォルマートは店舗とデジタルの融合を急ぐ。
商品の受け取りについては、冒頭の店内ピックアップに加えて、専用ステーションで商品を受け取る「カーブサイドピックアップ」の運用を始めた。ドライブスルーのようなもので、オンラインで生鮮食品や加工食品を注文後、指定された時間に行けば、従業員が商品を車のトランクに積み込んでくれる。
また、6月には生鮮品の宅配事業で米配車サービスのウーバー・テクノロジーやリフトとの提携を発表した。あくまでもテスト段階だが、自宅への配送を希望する消費者のために、店舗から自宅までの配送をウーバーなどの運転手に任せる戦略だ。実現すれば、受け取りの時間帯指定がしやすくなる。
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