東北地方太平洋沖地震(11年3月11日)では、初期微動の検出が難しいという課題が突き付けられた。この地震は初期微動が極めて微弱で、時間をおいてから震幅が大きくなるというこれまでにはない特徴があった。また、周波数が低い(ゆっくりした)揺れが長時間にわたって続いた点も特徴だった。

 そこで今度は遠方地震計に手が入り、初期微動に加えて主要動を検知する機能を追加した。つまり「初期微動を取り逃がしても主要動を検知できれば、その主要動が新幹線の沿線に到達する前に警報を発することができる」という考え方だ。

 ユレダスでは、「遠方地震計は初期微動の検知による早期警戒」「沿線地震計は主要動の検知」と明確に役割が分かれていた。しかし、テラスは遠方地震計と沿線地震計のいずれも、初期微動と主要動の両方に対応できるようになり、さまざまなケースを想定した役割分担を行っている。

 そして現在では、沿線地震計が50カ所、遠方地震計(テラス検知点)が21カ所という陣容になった。それより外側についても、気象庁の緊急地震速報から情報を受けられるようになっている。ここで紹介した以外にも、新幹線の地震防災システムにはさまざまな改良がなされている。

沿線だけでなく遠方の地震も検知
遠方地震計と沿線地震計の設置箇所
遠方地震計と沿線地震計の設置箇所
初期微動を検知して送電を停止
地震警報システム(テラス)の概要
地震警報システム(テラス)の概要

システムの「目」も改良

 もちろん、微弱な初期微動を確実に検出できる方が、早期警戒の機能は高まる。ところが、地面の揺れが発生する原因は地震だけではない。沿線地震計は列車の通過に伴う揺れの影響があるかもしれない。

 また、地震計の近くを大型の車両が通ったり、土木工事を行ったりしたときにも、やはり揺れは発生する。そうした揺れに起因する誤警報を排除しつつ、地震によって発生する揺れは確実に検出したい。

 そこで工夫が求められるのが地震計である。その地震計の開発・製造を手掛けているのがリオンだ。もともと補聴器で知られているメーカーだが、振動を検知して電気信号を出力するところは、音を扱う補聴器も、揺れを扱う地震計も共通している。しかも、微弱な振動を相手にしなければならないところも似ている。

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