震源推定が3秒から2秒へ

 その後、JR東海では独自に新しいシステムの開発に取り組み、2005年8月に「東海道新幹線早期地震警報システム(TERRA-S : Tokaido shinkansen EaRthquake Rapid Alarm System、以下テラス)」を導入した。

 テラスの開発に際して目指したのは、より早く、より高い精度で震央位置を推定して送電停止の指令を出すことだった。P波を検知してから震源の位置を推定するまでに要する時間は、ユレダスでは3秒かかっていたものが、テラスでは2秒に短縮された。

 速さと正確さを高めるため、震央位置を推定する際のロジックが、ユレダスとテラスでは異なっている。そのロジックはつまるところ、地震計からのデータを受け取って解析するソフトウエアの問題である。そして、地震の揺れだけを確実に検出する地震計も重要な役割を負っている。

 実は、気象庁が運用している緊急地震速報のルーツはユレダスにある。全国に展開した地震計のネットワークで初期微動の発生を検出して、主要動の揺れが到達する前に警報を発するという動作はユレダスと同じである。こちらは速報が目的だから、送電停止の指令を出すわけではない。

過去の地震の経験を生かす

 事故や災害は往々にして、これまで対策を講じていなかったポイント、見落とされていたポイントを突いてくる。裏を返せば、事故や災害を経験して得られた知見を反映させることで、対策が強化・改善されることになる。では、新幹線における地震災害の経験は、どう生かされてきたのだろうか。

 兵庫県南部地震(1995年1月17日)では高架橋の崩落が発生して、構造物の耐震補強が一挙に進むきっかけとなった(下の写真参照)。

(写真提供=JR東海)
高架橋の耐震補強
高架橋の耐震補強
高架橋の耐震補強 最も多く使われているのが、厚さ6mmもしくはそれ以上の鋼板を橋脚に巻いて補強する「鋼板巻」工法
鋼製パネルで組み立て補強
鋼製パネルで組み立て補強
周囲に充分な作業空間を確保できない場合、鋼板ではなく鋼製パネルを用いる
トンネル内部の補強
トンネル内部の補強
コンクリート覆工と地山の間の隙間にモルタルなどを充塡する。強度が不足する箇所はロックボルトで補強

 新潟県中越地震(2004年10月23日)は上越新幹線の沿線に近いところで発生したため、新幹線の立場から見ると直下型地震となる。すると、遠方の地震計で初期微動を捉えるという早期警戒の考え方が成り立たない。

 そこでテラスでは直下型地震への備えとして、これまでは主要動の検知しかできなかった沿線地震計に対して、初期微動を検知する機能も追加した。直下型地震でも初期微動はあるから、それを検知できれば初動がわずかでも早くできる。

 また、警報を発するエリアを地震の揺れに応じて変えるようにした。つまり、沿線地震計が弱い揺れを検知したら狭い範囲に、強い揺れを検知したときには広い範囲に、それぞれ警報を発して送電を止める仕組みだ。

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