従来のスピーカーの常識とは違う構造を考案し、難聴者が聞き取りやすい「ミライスピーカー」を開発。今年4月施行の障害者差別解消法が販売を後押しし、銀行などで導入が進んでいる。

都内在住の角田一郎さん(93歳)は老人性難聴を患っている。自室でテレビを見るのが趣味だが、隣室まで聞こえるほどの大音量でなければ楽しむことができない。
1年前、知人から譲り受けた「ミライスピーカー」を使い始めたところ、テレビの音がクリアに聞こえるようになった。「特に人の声が聞き取りやすい。歌番組やニュースが楽しみになった」。音量の数値は以前の3分の2ほどに下がり、同居する長男の良平さんも「近所への気まずさがなくなった」と喜ぶ。

今年3月、りそな銀行東京中央支店(東京都中央区)にも、待合客の呼び出し用にミライスピーカーが導入された。家庭用と同じ小型のスピーカー1台で「店内どこにいても音がはっきり聞こえる。それでいて、近くで聞いていても不思議とうるさくない」(担当者)。
障害者差別解消法が契機に
●ミライスピーカーの販売台数

ミライスピーカー導入の背景にあるのは、今年4月施行の障害者差別解消法だ。同法は公共機関や民間企業に対し、障害を理由にした不当な差別を禁止し、障害者への配慮を求めている。
りそな銀は他店にも試験的にミライスピーカーを導入することを検討中。広島銀行など他行も相次いで試験導入を決めたほか、CD販売大手のタワーレコード(東京都渋谷区)も試聴機を設置している。
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