拡大を続けるインターネット通販。商品が注文者の元に届くまでには、いくつもの煩雑な工程がある。このような物流の多様な作業を代行して急成長。商品撮影やラッピングなどの「付加価値」も強みだ。

(日経ビジネス2017年6月19日号より転載)

商品が整然と並んだ棚
商品が整然と並んだ棚
手元の注文データを見ながら、商品を取り出す女性従業員。コストを抑えながらも、商品を間違えないように作業を工夫している(写真=藤村 広平)

 Tシャツ、サプリメント、音楽アーティストの関連グッズ……。インターネット通販で注文が入った商品を、リストを片手に女性従業員が背丈を超える高さの棚から次々に取り出していく。色もサイズもバラバラ。さらにいえばこれらの商品を預けている会社もバラバラというのが、物流代行のイー・ロジットが2014年に稼働させた埼玉フルフィルメントセンター(埼玉県八潮市)の特徴だ。

 フルフィルメントセンターとは商品の管理や配送などを担う物流倉庫のこと。延べ床面積は約3万平方メートルと東京ドームのグラウンド2個分以上に達する。1日に2万~2万5000件、繁忙期の12月には3万件を出荷することもある。

 このセンターを物流倉庫として利用する企業は、健康食品、化粧品、アパレル、雑貨などを中心に約270社に達する。その多くが中小企業だ。「インターネット通販はニッチな商品をどれだけ数多く取りそろえられるかが重要。ただ規模の小さな会社では、種類が多いと、一つひとつの物流を管理するのが難しい。それを一括して代行できるのが我々の強みだ」。イー・ロジットの角井亮一社長はこう自信を語る。

梱包から写真撮影まで代行

 経済産業省によると、ネット通販を含むEC(電子商取引)の市場規模は16年に15兆1358億円。7兆7880億円だった10年と比べて、ほぼ2倍に増えた。スマートフォンの普及も進み、外出先にいてもいつでも注文できるようになったことが追い風になっており、今後も増加が予想されている。

 ネット通販が拡大すればするほど、物流業界も難しい対応を迫られることになる。企業から個人消費者へ向けての物流は、企業同士や個人同士の物流よりも作業量が多いからだ。

 例えば、ネット通販で服1着を販売する場面を想像してみよう。消費者の注文を受けるために、まず企業は商品となる服のサイズを測って、説明文を書き、写真を販売サイトに掲載する。

 サイトで欲しい服を見つけた消費者は運営企業に注文。その情報を受け取った企業の倉庫では、従業員が注文のあった服を保管場所から取り出す。最後に色やサイズに間違いがないかを確認したうえで梱包・発送する。

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