(日経ビジネス2017年6月12日号より転載)


血液検査の数字も体重も、順調に下がって維持されていますね」。栄養士がモニターを見ながら話すと、「先生に『合格』って言われたよ」と電話の向こうから弾んだ声が聞こえてくる。
平日の午後、都内のオフィスにあるコールセンター。オペレーターは40人弱。全員が栄養士の資格を持つ。
栄養士が監修したオリジナルの冷凍弁当を通信販売するファンデリー。弁当を購入する客に対し、栄養士が電話でカウンセリングを行うのが最大の売りだ。顧客数は20万人を突破。このうち担当の栄養士がつき、長期的な食事改善プランの下で定期的に弁当を宅配する「栄養士おまかせ定期便」の利用者は約7300人。単発利用も定期便も客が負担するのは弁当代のみで、登録料やカウンセリング料はかからない。
販売する冷凍弁当のメニューは、インターネット販売を含めて400種類に上る。1食当たり300キロカロリー未満に抑えた「ヘルシー食」のほか、腎臓病患者向けの「たんぱく質調整食」、かんだり飲み込んだりする力が低下した高齢者向けの「ケア食」などがある。いずれも塩分量は2.0g未満だ。
医療機関での指導をサポート
成長を続ける秘訣の一つが、全国の医療機関とのネットワークだ。
ファンデリーは年4回、弁当のカタログ「ミールタイム」を発行しており、全国1万8000カ所の病院や診療所、調剤薬局で配布。医療機関で医師や栄養士から直接カタログを手渡してもらうことで、客からの信頼感はぐっと増す。
肥満の改善はもちろん、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を治す上では、薬よりもまず食習慣を変える「食事療法」が不可欠。だが、「塩分を控えましょう」「食事量を減らしましょう」といった漠然とした指導では、実践につながりにくい。「一人ひとりに合った具体的で継続的なアドバイスが成功のカギを握る」(阿部公祐社長)

ファンデリーは医療機関で指示された食事療法をサポートする方針を取る。初回は、血液検査の結果、身長・体重、医療機関で説明されたことなどを必ず聞き取る。その上で塩分やたんぱく質などの配合量を細かく勘案し、食事改善プランを立てる。1日1食のみミールタイムの弁当に置き換える客に対しては、調理の工夫や外食時の注意点など食生活全般にもアドバイスする。
管理栄養士の立石智子さんは、ファンデリーに勤務して5年目。これまで担当した客からは、「初めて減量に成功した」「お薬が要らなくなった」といった声をたくさん聞いてきたという。「効果を実感してもらえたときは、栄養士をしていてよかったと感じます」
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