そこで、自ら韓国や欧州に渡り、現地のアパレル企業や生地ディーラーと直接交渉して販売網を広げていった。吉岡社長は「当時、福井でそんなことをしている会社はなかったので、『あの社長はずっと海外に遊びに行っている』と思われていた」と振り返る。ここでも、商社に頼って自ら販路を持たず、じり貧に陥っていった国内産地の多くの企業と逆を進んできたのだ。

「メード・イン・北陸」を発信

 吉岡社長が海外で販路を確立したタイミングは、アウトドアやスポーツ用品向けとして使われていた合繊生地が高級ブランドに採用された時期と重なった。「柔らかな手触りがほしい」「とにかく軽い質感がいい」といった高級ブランドの注文に対応できた第一織物は、ファッション向けの合繊生地の市場の拡大とともに急成長を続けている。

 かつては「値段が高過ぎる」として第一織物の生地を敬遠していた国内アパレル企業も最近、再び福井を訪れるようになったという。ファストファッションとの競争が激しくなる中で「もう一度、質の高い素材を見直そうという動きが出てきた」(吉岡社長)。

 2014年からは北陸の同業他社と組み、生地の共同開発や販路開拓などの旗振り役を務める。空洞化を食い止め、日本の繊維産業の火を絶やさないよう、世界に「メード・イン・北陸」を発信し続ける。

(杉原 淳一)

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