営業に批判、問われる姿勢

 構想は壮大だが、一方でニチガスの営業姿勢について批判も高まっている。顧客を勧誘する際、説明や手続きが不十分だったり、誤解を与えるような表現があるという苦情が、消費生活センターや電力・ガス取引監視等委員会などに多数寄せられている。委員会はこれを問題視しており、ニチガスに説明を求めたほか、厳しく調査、対応する考えもあるようだ。

 ニチガスは営業プロセスの抜本的な見直しに着手し、問題があったとみられる顧客には直接謝罪して回るなど対応を取っているという。ただニチガスに対しては以前から、時に強引な営業について批判があったのも事実。業界からは「結局姿勢は変わらないのか」という冷ややかな声が広がる。

 都市ガスの自由化競争はまだ緒戦。ニチガスの評判に傷がつけば、構想実現はおろか、今後の成長すらおぼつかなくなる。日本を代表する企業への脱皮を図るにはイノベーションも重要だが、それ以上に最優先すべきなのは、苦情が出ない仕組みや組織作りに地道に取り組むことだろう。

INTERVIEW
和田眞治社長に聞く
独占にストレスを感じる人は多い
(写真=竹井 俊晴)

 日本は資源を持たない国であるがゆえに、エネルギー供給に関しては安定や安全がずっと優先されてきた。本当は価格の安さも大事だが、この3番目の価値がこれまで犠牲になってきた。

 少子高齢化の時代を迎えた日本のエネルギー業界が、今までと同じ状態でいいわけがない。もっと事業を効率化して、料金を下げて、消費者に貢献しないと業界はだめになってしまう。

 価格を安くするには、業務を一から見直すしかない。規制で守られてきたこともあって、とにかくこの産業には無駄が多いと考えている。そこで私たちは20年前から業務のIT化やクラウド化を進めてきた。当時は何をやっているんだとバカにされたものだが、結果がついてきている。外資を受け入れたときもそう。ニチガスはファンドに食いつかれ、ボロボロになるだろうと散々言われた。

 東電と提携で何を狙っているのか。これも20年ほど前から、東電と一緒に仕事をしたいと思っていた。今回の提携でその念願がかなったわけだ。東電のような、どちらかといえば保守的な企業と、その対極にある我々との協業など絶対に成功しないという見方もある。確かにリスクはある。だが失敗のリスクがあるからこそやるべきだし、組んでみなければ新しいことには挑戦できない。

 ガスにしろ電力にしろ、独占企業のサービスにストレスを感じていた人は多いはずだ。1人でできる仕事を、安全性を高めるといって5人くらいで分担し、料金に上乗せしてきたのが「総括原価方式」である。この仕組みが長らく続いたせいで日本のエネルギー産業は世界に後れを取った。自由化した市場で東電と新しいプラットフォームを作り、多様なプレーヤーを募ってイノベーションを起こしていく。ようやくその一歩が踏み出せた。

 自由化の本当の意義は、独占企業を排除するとか、エネルギー会社同士の再編を進めることではない。新しい知見をどんどん取り入れて、産業を変えていくことだ。エネルギー業界は典型だが、日本はリスクを嫌う傾向が強くなっている。志や能力の高い人が活躍しづらい状況になっているのではないか。生意気かもしれないが、私は自由化で誕生する今回のプラットフォームを、有能な人が活躍できる“聖地”にしたいと考えている。(談)