「雲の宇宙船」を武器に

 例えば、配送。ニチガスが関東に抱える14カ所のLPガス配送拠点は全て無人運用されている。顧客宅のガス利用状況を随時把握し、ボンベの交換時期を予測。どのようなルートで配送するのが一番効率が良いのかまで自動で割り出し、前日の夕方には各配送員に細かく指示が送られる。ニチガスの全社員が今どこで何をしているのかもスマホ経由でモニターし、顧客宅でガス漏れがあったり、クレームがあったりすれば、近くにいる作業員や営業員が直ちに駆けつけられる。

 ニチガスのガスメーターには「QRコード」が張りつけられている。スマホで読み込めば、顧客の個人情報やガス器具の状況を把握できる。器具をメンテナンスする際は、スマホ画面にチェックリストが表示され、入金確認もその場で可能。データはリアルタイムにクラウドに送られるので、社員が拠点に戻って伝票を入力する手間も省ける。

 足元でも進化は急ピッチで進む。16年9月にビッグデータ解析やAI(人工知能)、フィンテックなどを手がけるITベンチャー、メタップスと資本業務提携し、AI導入や顧客向けの新しいウェブサービス、決済システムの導入を進めている。

 AIで顧客の需要をより精緻に予測したり、問い合わせに自動対応したりするサービスを開発している。「足元で16以上のプロジェクトが進行中だ。システムができることは極力システムに任せることで、新しいエネルギーのプラットフォームを作る」とニチガスの柏谷邦彦常務取締役は意気込む。

 同業者や異業種の利用が広がれば膨大なデータが積み上がる。それをメタップスのようなITベンチャーを活用して解析することで新サービスや技術を生み出す。それを目当てにさらに顧客が増えていく好循環を期待する。「例えば水道局や電力会社に使ってもらい、水道、電力、ガスなどのインフラ業務を一括処理できれば効率化が一気に進むだろう」(向井正弘常務取締役)

 ニチガスの本社1階には仮想通貨ビットコインのATMが設置されている。昨年10月にビットコインで料金を支払えるサービスを始めたこともあるが、新たなサービスに取り組んでイノベーションを起こし、業界を変えるという強い意思も込められている。