1枚から注文できるプリント基板のネット通販サービスを手掛けるピーバンドットコム。低価格・短納期・高品質が特徴。開発者紹介サービスにも乗り出す。
(日経ビジネス2017年5月29日号より転載)

重さ100kgを切る超小型の人工衛星を開発・運用する、東京大学発ベンチャーのアクセルスペース。2013年に民間初の気象衛星打ち上げに成功し、22年までに50基の打ち上げを計画中だ。
宇宙空間で使用するため、超小型衛星に搭載される部品には高い信頼性が求められる。そんな最先端技術の「粋」を集めた超小型衛星の開発時に、アクセルスペースが利用する“あるウェブサイト”がある。ピーバンドットコムが運営する「P板.com」だ。
ユーザーの要望にフル対応
P板.comは、半導体や電子部品で電気回路を作成する際に部品同士をつなぐ(配線する)役割を担うプリント基板のネット通販サイト。プリント基板そのものの設計や、基板上への部品の組み立てなども依頼できる。
特徴は、数量や納期、価格、品質といった「ユーザーのどんな要望にも応じられる点だ」(田坂正樹社長)。基板1枚から発注可能で、納期は最短で1日。価格も「仕様によっては大手メーカーの3分の1程度」(後藤康進COO=最高執行責任者)という。品質面では試作品から、人工衛星のような高い信頼性が求められる基板まで対応する。
03年4月にサービスを開始。累計の取引社数は約1万9000社で、ユーザー登録数は4万5000を超えた。顧客には中小企業やベンチャー企業に加えて、日産自動車など大企業の技術者も含まれる。17年3月には東証マザーズへの上場を果たした。
アクセルスペースの永島隆CTO(最高技術責任者)は「衛星1基に使われる基板は数十枚。大手だと納期が1カ月以上になることもあり価格も高い。P板.comは我々に合ったサービスだ」と同サイトを選ぶ理由を話す。

誰でも電子機器を開発できるようにした“黒子”のような存在であるピーバンドットコム。特徴的なサービスを実現できた理由は2つある。
一つが独自開発した受発注システムだ。同社のサイトではメニューからプリント基板の数量や素材、外形寸法、特殊加工などの条件を選んでいくだけで見積もりが表示される。後は設計データを送るだけで発注できる。「プリント基板大手のように営業担当者とのやり取りが不要となり、時間の短縮とコスト削減につながる」(後藤COO)
もう一つが外部の製造工場の活用だ。実はピーバンドットコムは製造工場を持たない。日本と韓国、台湾、中国など約10カ所の製造工場と提携しており、ユーザーの要望と工場の稼働状況に応じて工場を使い分けている。
製造委託方法にも工夫を凝らす。プリント基板は文字通り、印刷版を使って配線を形成する。同社のユーザーは20枚程度の小ロットが中心で、大型の印刷版には空きスペースが生まれてしまう。そこで同社は複数のユーザーからの発注依頼を取りまとめて1枚の印刷版を作ることで生産時の費用も抑えたという。

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