相手側は即オーケーでしたか。
増田:いや、全然。銀座は家賃などの条件が厳しく、書店は営業が難しいという認識が広がっていますね。最近も大型の書店が閉店しています。でも僕らは新しいビジネスモデルを提示します。
書店業界全体は、利益率が1%を割っているのではないかといわれているようです。銀座の新店はどれくらいの営業利益率を見込んでいますか。
増田:分からないけど、1割くらい出さないと。チャレンジ目標としてですよ。
今回の新店舗は理想の形になっていますか。
増田:まだ駆け出しです。全然、駆け出し。棚に本を入れているだけではだめなんです。伝えたいメッセージがあって、それを伝えるために本を置かなきゃいけない。
本でなくライフスタイルを売る
どういうことですか。

増田:僕らは本を売っていないんですよ。ライフスタイルを売っている。見た目は一緒ですよね。本は、売っているから。でも、本を仕入れて本を売る小売業と明らかに違うのは、僕らはライフスタイルを提案するために本を使っている。だからライフスタイルに関係のない本は置いてない。
居心地の良い店でライフスタイルを提案することが、消費者が本を買うという行動にどれほど結びつきますか。
増田:代官山の蔦屋書店の坪当たり売り上げは、普通の郊外型の書店の3倍ぐらいあります。本を売っているスペースは300坪ぐらいと決して大きくない。そこで、月商1億円、本だけで売り上げていますよ。
普通の書店の場合、「こういうものを読みたい」というのがあって、来店して探しますね。蔦屋書店では、目的がなく来ても「こんなものがある」という発見が多くあるということですか。
増田:そうです。目的買いならばネットで検索すればいい。うちは発見なんです。価値を提案しているのですから。
スマホでできないことをやろう
レンタルDVDを中心とした「TSUTAYA」のFC(フランチャイズチェーン)事業で成長をしてきたCCCが、ここにきて相次いで直営店舗を開発している狙いは何ですか。
増田:僕らは企画屋です。時代に即した新しい企画を提示していかないといけません。もうスマートフォンを通じてアマゾン(米アマゾン・ドット・コム)などでできることは全部やめようと決めました。何年か前にニューヨークに行ったとき、大型CDショップが閉店したり、大手書店チェーンが倒産するかもしれないと聞いたりして、日本も絶対こういう流れになると思ったのです。
ただ、人には理解の領域があって、理解の範囲を超えると、企画について納得できないので、乗ってきてもらえない。つまり(FC運営企業や他の小売業に)企画を買ってもらえないのです。自分たちでやって、数字を見せる。代官山 T-SITEを作ったのもそのためです。ある意味でショーケース作りです。
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