リアルに突き進む必然

 なぜリアルにこだわるのか。映画や音楽が急激にネット配信にシフトする中、ネットに事業の軸を移すことはできなかったのか。理由を探せば、増田社長が進めてきた事業が、リアル店舗を軸にしたFC事業だったというところに必然的に行き着く。

 現在、映画やドラマのネット配信で世界の市場を席巻している米ネットフリックスは、1998年にDVDの宅配レンタル・販売から事業を開始している。その後、時代の変化を察するや否や、ネット配信によるビジネスモデルに移行。世界を席巻している。

 一方、CCCもネット配信を手掛けてはいるが、ネットフリックスのような、事業モデルの抜本的な転換はせず、柱はあくまでも店舗だ。増田社長は「加盟店のビジネスを毀損することに遠慮した」とその理由を語る。

 FC企業の売り上げ減は、CCCの成長鈍化に直結するからだ。CCCはリアル店舗の可能性を追求せざるを得ないとも言える。将来性のあるフォーマットを提示しなければ、自社の成長が危うくなる。逆境に背中を押された格好で打ち出したのが、居心地を重視した生活提案型のリアル店舗だった。

 CCCはそこに、自社FCであるレンタル店の再生以上の商機を見いだした。ネットの攻勢に苦しむのはレンタル店にとどまらないからだ。「ネットで提供できないこと」をとにかく店舗に詰め込むという、業界のアウトサイダーらしい大胆な提案が小売業の経営陣らの目に新鮮に映った。

 CCCが2016年5月に大阪府枚方市の近鉄百貨店跡地にオープンした「枚方 T-SITE」は象徴的だ。8階建て、計9フロアのビルで、地下1階には食料品、1~3階にはカフェやレストランがあり、併設するように書店がある。5階は子供の遊戯スペースに絵本、子供服などが並ぶ。6階、7階は重厚な見栄えのする銀行。店内はさながら百貨店のようだ。

 三越伊勢丹ホールディングスは、16年にCCCと提携した。まずはCCCのTポイントの導入などが先行したが、三越伊勢丹の大西洋・前社長はCCCの商業施設のアイデアにも共感していた。不振にあえぐ地方百貨店再建の切り札に「枚方のような要素を取り入れていきたい」と考え、提携関係を深めていこうとしていた経緯がある。

 ネット通販が全盛の時代でも存在意義があるリアル店舗とは何か。販売だけならネット通販の圧倒的な品ぞろえには勝てない。ひとつの答えとして、CCCは店舗で様々なイベントを展開する。「モノを売るのではなくライフスタイルを売る」と増田社長は強調する。

 例えば、13年に開業したロードサイドの大型書店、函館蔦屋書店では、年間1000件程度の講座やワークショップなどを行う。蔦屋書店は場所を無料で開放するのみ。イベントは、顧客の来店頻度を上げ、売り上げ向上に結びついている。施設全体の1人当たりの平均年間購入金額は1万3120円で、利用日数は6.9回だが、イベントの参加者平均では、その数字は3倍に膨れ上がる。函館蔦屋書店は16年には初の黒字化を達成した。

 CCCの施設に個性をもたらしているのは、「たたき上げ」のオーナー創業者、増田社長の細部へのこだわりもある。店舗で働く社員にとって「顧客視点の徹底」は最重要課題だ。

 17年2月17日、枚方T-SITEの別館オープン日当日。前日から枚方に入り、店舗を見て回っていた増田社長は、この日もオープン直前まで店舗をチェックした。店舗周辺を歩き、どこから顧客が入ってくるか、クルマで来店する顧客からはどのように店舗が見えるか。そういったことをくまなくチェックする。「クルマで来た人が、まず見るの、ここでしょ。ここにサインがなくてどうするの」「この地図をこんなところにつけて意味あるの」。店舗内に入ってからも、次々と指摘をする。「乳母車で来たお母さんに、階段はきついんじゃないかな」「レジがどこかまったく分からないよ」

 「社長の肝煎りの店に配属になると本当につらい」。こう話すCCCの元社員もいる。ただトップダウン式の徹底した顧客視点は、大手小売業の経営者が評価する点でもある。

 西日本地盤のスーパー大手イズミの山西泰明社長は言う。「私たちが小売業として怠っていたことを次々に実行している。ニーズがなかったのではなく、提案する企業がいなかっただけ。新しい顧客の創造をしてこなかった」。イズミは、4月28日に広島市にT-SITEをテナントとした新しい商業施設「レクト」を開業した。

 CCCは、店舗というハード面のみならず、「顧客視点の徹底」というソフトも合わせて、企業に企画提案する。それが、中小規模のFC加盟店のみならず、エディオンやイズミといった業界大手を引き寄せているのだ。

 CCCのもう一つの大きな収入源である「Tポイント」も、各業界の大企業を相手にした一種のFCビジネスといえる。売り上げに応じたシステム利用料が収入となっている。

 Tポイントのデータを自社のマーケティングに使う加盟企業は、168社に上る。導入企業の一つ、すかいらーくの谷真社長は、16年12月期の売り上げ増加は「Tポイントのマーケティング効果」と言い切る。Tポイントの属性データを参考に、過去最大規模のメニュー改定をした。自社でポイントカードを展開するよりも「費用対効果が圧倒的に高い」。メニュー戦略、立地選択、業態転換のすべてに、Tポイントのデータを使っている。

業容を急速に広げ、もはや「レンタル店」とは呼べない
●1980年代以降のCCCの主な事業展開