帰国した中島社長は、同業の製材会社や建設会社などに呼びかけて、CLTの研究や普及活動を担う業界団体、日本CLT協会を設立。国内の森林資源の活用を目指す行政も巻き込んで、耐久性に関する研究や法整備などを後押ししてきた。13年にはCLTの仕様を定めたJAS(日本農林規格)が制定され、昨年は建築基準法のルールも改定された。特別な届け出をせずにCLTを利用できるようになり、ついに本格普及への道が開けたのだ。中島社長は10年越しで地道な普及活動を続け、文字通り「ゼロから市場を立ち上げた」。

<b>中島浩一郎社長は、CLTの普及で日本の林業活性化を目指している</b>(写真=松田 弘)
中島浩一郎社長は、CLTの普及で日本の林業活性化を目指している(写真=松田 弘)

 苦労を重ねて事業化にこぎ着けたCLTが今は銘建工業の成長をけん引する。今年、福島県でCLTを使った約170戸の3階建て復興住宅の建設が始まる。この国内最大のCLT建築物にも同社が建材を供給。CLT工場を本格稼働させることで、17年12月期の売上高は前期比15%増の約260億円を見込む。

 さらに日本各地の自治体に、地元の木材で作ったCLTを使う公共施設を提案して受注を拡大しようとする。中島社長の視線の先には海外もある。今年から台湾への輸出を開始。「台湾は森林資源が乏しく、木材をほぼ100%輸入している。CLTは付加価値の高い建材として注目されており、現地からの引き合いは非常に強い」(中島社長)。受注拡大により工場をフル稼働させることで、19年12月期には売上高を300億円の大台に乗せることを目指す。

CLTが成長をけん引する
●銘建工業の売上高の推移
CLTが成長をけん引する</br><small>●銘建工業の売上高の推移</small>

あらゆる手段でコストを低減

 もっとも事業拡大に向けた課題もある。CLTのコスト競争力を高めることだ。量産化が始まったばかりのCLTは、鉄筋コンクリートと比べればまだ割高。そこで銘建工業は、工場で生産したCLTを、建物の設計図面に沿ってあらかじめ加工する。CLTを切断・加工し、窓枠やネジ穴などを作っておく。建設現場ではそれらのパーツを金具で接合して一気に組み上げられる。CLTを“最終製品”にまで仕上げることで工期を短縮し、総工費を圧縮することで、コスト面の不利を補う戦略だ。

 さらに工場の自動化で生産性を改善するのと同時に、原料の木材を使い尽くすことで、CLTの価格を引き下げる。製材で発生したおがくずを使うバイオマス発電施設を建設して工場の電力を賄い、売電もしている。おがくずは押し固めて、ボイラー燃料の「木質ペレット」としても販売。今後はペット用品の“猫の砂”など利益率の高い商品にも用途を広げる。

 海外の木材に比べて価格が高い国産材の利用を広げるため、あの手この手で知恵を絞る。「CLTで日本の森を復活させる」という目標に向けて、中島社長は新市場の開拓を急ぐ。