永野毅社長に聞く
「損保」にはこだわらない
お客様の目線で見ると損害保険と生命保険という区分けはよく分からないものだ。お客様が興味あるのは、「自分と家族がどうしたら安心して暮らせるのか」だけ。保険会社はトータルで安心を提供するのが大事で、そのためには業法による壁を取り去っていくべきだと考えている。

私自身も「損保」ということに、全くこだわらない。大切なのはお客様の視線。保険会社は自分が売りたい商品をお客様に押し付けることが長年続いた業界だったという反省がある。我々の企業スローガンは「To Be a Good Company」。つまり、まだグッドカンパニーにはなっていない、という気持ちで常に取り組む必要がある。
10年以上前から海外を目指してきた。世界中の保険会社と比べると、弊社は14~15番目くらいに位置している。欧米の会社は買収を繰り返して大きくなった。上のランクに入りたいという思いもあるが、無理な買収を繰り返して健全性を台無しにしたら元も子もない。そこをブレないようにしていけば、必ず数字は上がってくると信じている。
日本は地震など災害が起こりやすい地理的な条件を抱えている。そこで海外や生保などを織り交ぜ、ポートフォリオを分散して経営していくことが必要になる。

ただ、日本市場の成長を諦めてしまったわけではない。我々の既存商品がお客様のニーズを捉えていないだけで、知恵を絞れば新たな成長分野は必ずある。
今年4月に初めて持ち株会社と東京海上日動火災保険の社長を分けた。グローバル経営の第2ステージに入ったと考えている。世界大手の仏アクサグループや独アリアンツグループなどに単純な物量で勝つことはできない。
これから海外で得た知見や人材を国内で生かしていけるかどうかがカギになる。日本流のやり方でグローバルでの存在感を高めていきたい。
どこから来た誰であろうと、優れた専門性や経験を持っている人がいたら、グループとしての重要な意思決定に参画してもらう。既にHCCやデルファイのトップなどには重要な経営会議にメンバーとして入ってもらっている。
最も意識を変えなければいけないのは、東京海上日動というドメスティックな会社だ。これはまだできていない。北沢氏を社長に指名したのは、そこを改革したいという思いがあったからだ。(談)
(写真=2点:竹井 俊晴)
日経ビジネス2016年4月11日号より転載
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